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震災から5回目の夏 いわき市調査レポート③


 今回が最後のいわき市調査レポートです。本記事では7月20日に、主にアクアマリンふくしまを会場として行われた諸行事を報告します。

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 午前中は、アクアマリンふくしまに新設された「わくわく里山・縄文の里」のオープニングセレモニーがありました。そのセレモニーでは、淡路島の伊弉諾神宮から寄贈された子ども神輿を、小名浜のわかぎ幼稚園の園児達と小名浜海洋少年団の子どもたちが担いでいました。

 その後、大國魂神社の山名宮司と豊間地区の方々によって設立された「浜菊会」が、アンバさまの唄を披露していました。アンバさまとは、関東地方から東北地方の太平洋岸の漁村で信仰され、疫病よけや海上・水上安全、豊漁の神を指します。豊漁を願って唄う唄がアンバさまの唄です。

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 「わくわく里山・縄文の里」の「おまつり広場」と呼ばれる場所には、伊弉諾神宮の神職、いわき市の神職によって祭礼が行われた後に、アンバさまの祠が安置されました。この祠の建物は、以前薄磯地区の「丸又蒲鉾製造有限会社」の氏神を祭っていましたが、このおまつり広場の象徴として同社より寄贈されました。

 その後、7月18日に海開きをした四倉海岸の様子を見に行きました。原発事故や津波によって、いわき市にあった多くの海水浴場は閉鎖になっていましたが、2013年より一部の海水浴場は海開きをしています。訪れるまでは、どれぐらいの人がいるのか、原発事故の影響を心配する人が多いのではないか、などと様々に考えていました。しかし実際に訪れてみると、家族連れで賑わい、浜辺で日光浴をする人や子どもと一緒に泳ぐ家族、サーフィンをする人達と様々な年齢層が訪れていることが判りました。

 午後には、アクアマリンふくしまへと戻り、福島県立いわき海星高校の生徒による神輿渡御を見学しました。この神輿も前述の伊弉諾神宮から寄贈されました。地元小名浜の諏訪神社の担ぎ手も参加し、小名浜港に停泊している海星高校の実習船「ふくしま丸」とアクアマリンふくしまとの間を渡御しました。

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 渡御の後、慰霊祭が開式となりました。最初に浪江町請戸地区・苕野(かやの)神社の田植え踊りが奉納されました。請戸地区は、津波・原発の被害を受けており、現在も立ち入りが制限されています。踊り手達は、埼玉や新潟などから集まりました。次に、いわき市で被災し、自身の家族も亡くした音楽家によるフルートの奉納もありました。

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 慰霊祭の後半は、福島県内の神職と國學院大學の学生・教職員らによって千度大祓が斎行されました。千度大祓は、大祓詞を100人の神職によって10回奏上し、災害が治まることを祈る神道の儀式です。会場には神職以外にも100名ほどが集まり、神職と共に東日本大震災の犠牲者の鎮魂と豊かな海の再生を祈願していました。


 以上、3回にわたって、5回目の夏を迎えるいわきの様子をお伝えしてきました。現在も仮設でのカフェ運営や、復興計画への参加、慰霊祭・祈願祭など、様々な形で宗教者・宗教団体が活動を行っている様子をうかがうことができました。このように地域の中で活動する宗教者・宗教団体が、今後どのような展開を迎えるのか、行政や住民らとどのような関係を気付いていくのか、今後も研究会では調査、検証を行っていきたいと思います。

(文責・魚尾和瑛)
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