宗教学専攻

【震災と宗教】2015年度第7回定期研究会が行われました

 

 329日(火)大正大学宗教学研究室において、「震災と宗教」の2015年度第7回定期研究会が行なわれました。今回は3月に行われた調査について、各調査者より報告がありました。また調査報告後には、平成28年度の予定も検討されました。なお本定期研究会は、科学研究費基盤研究(C)「東日本大震災後の地域コミュニティの再編と宗教の公益性に関する調査研究」(代表:弓山達也)による研究の一端になります。


 今回は、震災より5年経過した311日前後のいわき市、釜石市、仙台市における宗教者・宗教団体の活動に関する報告が、弓山達也・東京工業大学教授、齋藤知明・大正大学専任講師、星野壮・大正大学非常勤講師の3名によって行われました。


 最初の報告は、齋藤先生による釜石市での調査についてでした。日本福音キリスト教会連合から派生した一般社団法人「いっぽいっぽ岩手」における追悼イベントの参与観察を実施し、宗教者や被災者の方々が5年を一つの区切りとして捉えられていることが印象的であったことが報告されました。


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つ目の報告は、星野先生によるカトリック仙台教区の支援活動についてでした。大船渡と陸前高田における震災以前からのフィリピン人の「見えないネットワーク」の一部が教会を中心とするネットワークに変容し、タガログ語のミサなどの宗教的ニーズが発生していることが報告されました。震災を契機にして、信仰を紐帯とするフィリピン人コミュニティが東北に広がっていることが見出されました。


 最後は、弓山先生よりいわき市についての調査報告がありました。ボランティアなどの外部の人が被災地に入ることによって、被災地に既存のものの価値が再発見されていく過程が報告されました。例えば、もともと何となくおこなっていたじゃんがらが震災後には歌詞の意味や歴史が意識されるようになったり、いわきの野菜(トマト)のおいしさを再認識したりする事例が挙げられました。



 これらの報告を受けて、震災を契機にして起った変化に対する「復興」の仕方には、多様な形式が存在することを感じました。また価値の再認識、時間の経過、信仰を紐帯とするコミュニティといった各調査報告で見いだされた動きには、それぞれ「他者性(異質性)」が共通していました。価値の再認識には、ボランティアを中心とする「他者」の存在が大きく影響します。時間の経過における復興は、被災した程度によって被災者同士でも「異なるもの」と認識されていたものが、時が経ち、同じ「悲しみを背負う者」という認識に変化しました。外国人という「他者性」においては、震災という大きな被害からの復興には協力が不可欠となり、新たなつながりが発生していました。それぞれの事例より、「他者性(異質性)」を乗り越える方法の示唆が得られました。

 

(文責:宮澤寛幸)