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宗教学専攻

【震災と宗教】2016年度第1回定期研究会が行われました

 

 614日(火)、大正大学宗教学研究室にて「震災と宗教」研究会 2016年度第1回定期研究会が行なわれました。今回は5月に行った調査について、各調査者より報告がありました。また、浄土宗僧侶であり、「ひとさじの会」の事務局長として避難所や仮設住宅での支援活動に携わってきた本学非常勤講師の吉水岳彦先生をゲストにお迎えし、震災復興に向けた宗教者の実践として「「祈りの道」再興プロジェクト―気仙三十三観音霊場の再興―」の報告をしていただきました。

 なお本定期研究会は、科学研究費基盤研究(C)「東日本大震災後の地域コミュニティの再編と宗教の公益性に関する調査研究」(代表:弓山達也)による研究活動の一端です。

 

 まず、5月の調査に関して、東京工業大学の弓山達也先生、本学の齋藤知明先生、本学院生の魚尾和瑛さんより報告がありました。

 

 1つ目は、弓山先生による、53日に実施された小名浜大漁旗プロジェクト(第1回「どんとやれ大漁旗」プロジェクト)についてです。本イベントへは、打ち合わせ・準備段階から参与観察を続けており、今回イベント関係者や参加者に聞き取り調査を行った成果について報告がありました。

 

 2つ目は、魚尾さんによる53日、4日に執り行われた大國魂神社例大祭についてです。今回は震災から5年を経過してどのような変化があったのかを中心に参与観察、聞き取りを実施し、その成果が報告されました。

 

 3つ目は、カトリックいわき教会での聞き取りについてです。弓山先生から、現在のカトリックいわき教会の被災者支援に関する報告がありました。

 

 4つ目の報告は、齋藤先生による釜石での調査についてです。今回は、釜石市における社会福祉協議会と宗教者との連携や、生活支援相談員を中心に公営住宅でのコミュニティづくりが行われている実態などが報告されました(本調査は、若手研究(B)「仮設住宅のコミュニティ再構築における宗教者・宗教団体の関与と政教関係に関する研究」の一端でもあります)。


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吉水先生による報告の様子

 

 次に、吉水岳彦先生に、「祈りの道」再興プロジェクトについて報告していただきました。

本プロジェクトは、ひとさじの会が岩手県の気仙地域における復興および地域活性化を目指して、地元の観光協会などと協力しながら気仙三十三観音霊場めぐりの再生・再興を進めるものです(現在はひとさじの会より独立)。ひとさじの会は、2009年に浄土宗の若手僧侶により設立された団体で、生活困窮者の葬送支援や炊き出しを中心に社会的弱者の「支縁」を行っています。東日本大震災後は被災地においても支縁活動を行っており、その活動の中で「仏壇や位牌が流されてしまって手を合わせる場所や機会がない」「仮設住宅は壁が薄くて思う存分泣くことが出来ない」という声が多く聞かれたそうです。

 そこで、気仙地域に伝わる宗派性のない念仏を唱えながら行われる観音霊場めぐりを、「慰霊のための巡礼」として地元の人々の想いにそった形で再生・再興しようという試みが始められました。具体的には、20123月より定期的に巡礼や法話、霊場マップ・ご朱印の作成、メディアでの告知等を行っており、地域の人だけでなく全国の人々にも訪れてもらうことで最終的には地域産業の再興にもつながるよう活動が進められています。

 

 今回の研究会は、これまで継続的に調査を進めてきた4つの報告に加え、吉水先生に霊場巡り再興プロジェクトの報告をしていただき、非常に充実した内容となりました。震災から5年以上を経て、インフラや住宅など物質面での復興のみならず、精神面での復興も進みつつあることを示す報告が増えてきていると感じます。そのような中、「宗教者」という立場からの心の復興への取り組みに注目することはますます重要になってくると思われます。最後になりましたが、お忙しい中、大変貴重な報告をしてくださった吉水先生に心より感謝申し上げます。


(文責・大場あや)

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