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宗教学専攻

【宗教学専攻】「宗教と社会」学会第25回学術大会に参加しました①

 2017年6月3日及び4日に、大阪国際大学において「宗教と社会」学会第25回学術大会が開催され、本学研究室からは、教員及び大学院生等9名が参加しました。

 大会初日は個人研究発表がなされ、本学研究室からは、以下の大学院生2名が発表いたしました。

・大場あやさん
「非農山漁村地域における契約講の特質とその変容-山形県最上町の事例から-」

・中村悟眞さん
「ハワイ浄土宗の現代的様態-開教使の活動を中心に-」


今回は、上記2つの発表について報告いたします。

 大場さんは、東北地方にみられる互助組織である「契約講」について、山形県最上町をフィールドに、葬送互助機能の経年による変容過程に着目した研究発表をされました。従来研究蓄積のある農村エリア(土葬地域)の事例だけでなく、町場(火葬地域)の契約講を対象化した点を強みとしています。
 大場さんは、最上町の向町(町場エリア)にある5つの契約講の変遷を調査し、同町農村エリアの契約講と比較した上で、葬儀互助を中核的な機能とする契約講の変容は昭和30年代から現代までおおよそ3つの時期に区分でき、火葬炉の設置や葬儀社の参入など、従来互助で担われていた重労働やワラ(燃料)の拠出等の代替機能を果たす装置が地域に導入されることを契機として、契約講の機能が徐々に放出されていき、結成時の目的を失った契約講が最終的に解体ないし親睦会化していく過程を明らかにしました。
 フロアからは、公衆衛生問題や生活改善運動との関わり、土葬地域と火葬地域の差異などについて活発な質疑がなされ、盛会となりました。

 中村さんは、ハワイ浄土宗における開教使の現代的様態に着目し、1980年代以降、浄土宗開教使の状況についてのまとまった研究蓄積がないことを踏まえ、その間の状況を埋めるため現地での聞き取り調査や、『開教』『布哇仏教』といった資料等を用いて多面的な分析の成果を発表されました。
 中村さんによれば、ハワイ浄土宗を支える現地の信者が世代交代をすることに伴い、寺院の経済基盤が葬儀や法事などの布施収入から「ボンダンス」というイベントや賃貸業などに変化していったことや、若い世代に対する布教活動の工夫、1980年代から継続して抱えている言語問題などが依然として課題となっていることを紹介しました。その上で、「ボンダンス」など若い世代にも浸透してきているイベント等を通じて、経済基盤や布教活動の基盤を再度構築することが、今後の教団維持に重要な役割を果たすのではないかと指摘しました。
 フロアからは、ハワイにおける日本仏教の状況に関する質問が多数寄せられ、経済基盤の問題や布教方法の問題、言語の問題など、活発な意見交換がなされました。


 最後に報告者の感想を少しだけ述べさせていただきます。
「宗教と社会」学会は、宗教学系の学会の中でも宗教社会学や宗教人類学に関するテーマを取り扱った発表が多く、時代的にも近代から現代を対象としたものが多いです。その意味では、現代に起こっている宗教現象や、近代から現代に連なる宗教現象に対して関心を持たれている方は、ぜひ参加することをおすすめします。
 また、学会に参加することは、発表者として自身の研究成果を広く公表することができるだけでなく、発表をしない人間にとっても、最新の研究動向を掴んだり、他大学の先生や大学院生と交流することができる、とても貴重な機会です。
 本学研究室では、若い年次からの積極的な学会参加を奨励しています。

 2日目は本学研究室の寺田喜朗先生が登壇されたパネルセッション「宗教研究において「実証的研究を行う」とはいかなることか」が開催されましたが、その詳細は次回に譲ります。

(文責・髙橋)

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