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対談:本との出会いを考える「本とあなたを繋ぐ素敵な空間」登場人物や情景を想像する分、本は体に染み込む尾形:中村さんは、どんなきっかけで書店を始めたのですか?中村:幼少の頃から本をよく読んでいて、私自身が本に助けられて生きてきたので、本屋に携わって、本の魅力を少しでも多くの人に伝えていきたいと思ったことがきっかけですね。尾形:本に助けられたと言いますと?中村:物語を通して得た記憶は、どこかで引き出せる。そんな記憶にずいぶん助けられてきました。キリスト教の信者に聖書が染み込むようにね。尾形:物語といえば小説になりますね。最近はネット小説にも人気作が見られますが、出版物に比べると編集者や校正者といった、人の手がかかっていないぶん完成度が低く、場面を想像しにくいように思います。中村:デジタルネイティブと言われる若い世代の子は、物心ついた時から映像を含む情報量の多いメディアがあって、想像する機会が少ないんですよね。本は容量が小さく効率が悪い媒体ですが、想像して理解する分、浸透力は強い。本のストロングポイントはそこだと思います。尾形:以前にいた出版社ではSNSをまとめたような本も扱っていて、センテンスが短くて読みやすいのか、若い方には売れていましたね。中村:売れる本と作りたい本のビジネス的なバランスは難しい時代ですよね。でも強い意志で何かを伝えたいと思う場合、100万人には届かなくても50人には届く時代でもあって、隙間はたくさんあります。 そこは書店の多様性にもつながっていて、ある分野に特化した本を重点的に扱ったり、ギャラリーやカフェを併設したりと、採算性を度外視した個性的な店も増えています。経済的にはともかく、文化的には活性化されているのではないでしょうか。尾形:書店の多様化が進んだ背景には、本の価格が上がって価値をシビアにチェックするために、売場にいる時間が長くなったことも関係しているのかもしれませんね。出版社側でも表紙のデザインなどを工夫し、一目見ただけで興味をひき、購入に結びつくクオリティが、今まで以上に求められています。CROSS TALK!ProfileProfile1991年生まれの千葉県出身。読書好きが高じて大正大学表現学部に入学。編集について学ぶ。卒業後、フリーランスの編集者として株式会社宝島社に3年間勤めた後、経験を生かして現職に至る。フリーランスとして、個人商店や中小企業のデザイン、販売戦略を中心にお手伝いをする。2012年に、長年住んでいた駒沢に「SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY」をオープン。尾形 和華さん中村 秀一さん株式会社セブン&アイ出版編集グループ書籍編集部SNOW SHOVELING BOOKS & GALLERY・店長02書店を経営される中村さんと、出版社で編集者をされている尾形さんに、書店や本との出会い方について語っていただきました。Feature072017 AUTUMNOHDAI Vol.103

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