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鴨台盆踊り

第9回 鴨台盆踊り

ひと夏かけて自分自身のアップデートを

鴨台盆踊り

第6回・第7回・第8回・第9回担当教員齋藤知明 (大正大学専任講師)

1. 開催当時から関わっていた盆踊り

-盆踊りの担当教員になった経緯を教えて下さい。

実は担当教員になる前から盆踊りに関わっていてました。最初は大学院生の時で、2011年に震災があった年です。そのときに第1回みたま祭りが開催され、弓山達也先生からの依頼で宗教学研究室の院生が警備を担当しました。

それ以後、指導教授の弓山先生が担当教員をされていたこともあり幾度か参加していました。第5回の盆踊りは2日間とも雨だったのですが、それでもたくさんの人が足を運んでいた光景を目の当たりにしました。一方で、もっと人を呼べるのではないか、もっと盛り上げることができるのではないかと可能性も感じていたんですよね。

あとは、学生と授業の中でイベントを作っていくのが、大変そうだけど楽しそうな先生方の姿を見て、いつか盆踊り運営の授業をやってみたいなと思っていました。

2015年に弓山先生が大正大学を退職することになり、先生から「来年の盆踊りの授業を任せたよ」と伝えられました。受け継ぐことができて嬉しかったと同時に、しっかりと運営をしていかなければと意気込んだ記憶があります。これが担当教員になった経緯です。

2. 学生と共に成長した第6回・第7回・第8回

-初めて担当された第6回はどのような様子でしたか?

第6回は特に広報に力を入れました。ポスターやフライヤーなどを早め早めに配布することを心がけました。ただ、本番当日は本当に人が来てくれるか不安で不安で仕方がなかったです。しかし、それは開場とともにすぐに杞憂に終わりました。子どもたちが16時になるや否や南門からどっと駆け込んできました。一方で、駐輪場として予定していなかった南門に自転車を置かれてしまって対応に困りました。そのような点を全然想定していなかったんですね。

2日目は朝から雨が降っていましたが、夕方には晴れるという予報だったので、出店は雨の地割りで対処し、盆踊りは櫓周りで踊る準備をしました。このように第6回は晴れと雨の地割りどちらも経験することができ、天気への対応など今後の基礎を作ることができたのが大きかったです。

第6回は2日間で合計約3,500人に来場していただきました。盆踊りで踊る人の数が2日目は特に多かったのが記憶に残っています。

-第6回の運営にはどんな特徴がありましたか?

第6回は、私が主に担当していた初年次教育の授業で顔見知りとなっていた3年生に声をかけたら多く受講してくれました。特に表現学部の学生はイベント運営に慣れていたので、運営方法、機材準備などでとても助けられました。

教育面では、今でも関わっていただいている上田勇仁さん(現・職業能力開発総合大学校特任助教)が、毎回の授業や準備作業の振り返りを記入させて評価する「リフレクション」というシステムを開発してくれました。これのおかげで、イベント運営のノウハウが蓄積されただけでなく、学生一人ひとりの意思や成長度合いが可視化されました。盆踊りの運営は授業の一環ですので、リフレクションはいまでも欠かせない要素です。

-続く第7回はどうでしたか?

第7回は2日間とも晴れていたこともあり、来場者は過去最大の合計約4,500人を数えました。また、浴衣客を増やすための広報活動に力をいれた甲斐があり、浴衣姿の人の数も非常に多かった印象があります。

1日目は準備中に火災報知機が誤作動を起こし、2日目は盆踊りが始まった瞬間に電源が落ちるといったトラブルもあってバタバタしていたのですが、2日目は学生の動きが断然に良くなり、私自身しばらく盆踊りの輪に入って踊る余裕もありました。

運営も2年目となり少し余裕がありました。前年経験したことでスケジュール感が分かり、必要な書類を学生に作らせたり、SNSや公式サイトを使った連載などの学生企画を新展開できたり、私があまり動かなくても良いよう事前に準備をできたのは大きかったです。

それ以上に、第7回の実行委員は積極的に動く学生が多かった印象があります。このときの統括班のリーダーは、いままでイベント作りをしたことがないだけでなく、サービスラーニングのような実践的授業すら初めてという学生だったのですが、授業がない日も毎日のように大学に来ては私の横で書類や資料を作成し、他の学生に指示を出していました。

最初はできないながらもなんとか成功に向けて努力する姿があり、それに他の学生たちも負けじとついてきた様子が垣間見られました。自発的によい循環が起きていてとても頼もしかったです。現在でもその「伝統」が続いていますね。

-昨年の第8回はどうでしたか?

第8回は雨対応がもっとも記憶に残っています。本番1週間前、毎日天気予報を見ては一喜一憂し、当日は常に雨雲レーダーを見ながら動いていました。1日目は昼で一度雨が止むものの夕方から雨が降るかもしれないという予報だったので、急遽晴れと雨の地割りをミックスして準備をするように指示しました。その日は気温が上がらず寒かったんですが、なんとか持ってくれとずっと祈っていましたね。

盆踊りが中盤に差し掛かかる頃、ゲリラ豪雨のような雨がザーッと降ってきました。そのとき、こちらの指示を出さないうちにMCをしていた学生が3号館の中に入ってくださいと呼びかけていました。会場内は混乱していたのですが、盆踊りを先導してくださる坂東扇太惠先生から「すぐに曲かけて! 踊るよ」と言われて曲をかけた瞬間、みんな吹き抜けを櫓に見立てて一斉に踊り始めました。これによって秩序が戻ったことが強く記憶に残っています。当日は準備段階から本番まで、全員が臨機応変に対応できて素晴らしい盆踊りになったと思います。

運営全体に関しては、前年の経験者がリピーターとして受講してくれたおかげで、教員としての関わりは、指導・指示ではなく、学生の提案にコメントをすることと合間合間に士気を鼓舞するくらいでした。私の関わりが薄くなればなるほどリピーターの学生たちが良く動くし、それに引っ張られて他の受講者も活動が活発化する。そのような縦の系譜みたいなのが構築され、実行委員全体がレベルアップした実感があります。

鴨台盆踊り
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3. 本番より重要なこと

-学生と接する時に気をつけていることは何ですか?

初めて担当した第6回は「自分がやらなきゃ」と全く余裕がなく、学生の成長よりもイベントを成功させることに意識が向いていました。第7回は本番までのスケジュール感がわかり明確に学生に指示を出せるようになりました。しかし、今思えばまだまだ教員主導だったなと思います。

第8回からは、私が主導的に動くことはなく、SAやグループのリーダーに対する進捗確認のみに意識を払いました。また、この回は経験者が積極的に動いてくれたので、このイベントを通してどうしたら一人ひとりが成長するのかなという教育面にやっと気を配れるようになりました。まずは学生の役割を奪わないように待つというのが教員のやるべきことだと思います。

ただ、やはり教員にしかできない仕事もあります。具体的に言うと、学生が活動しやすいように環境整備や資料印刷をすること、学内外への挨拶や調整をすること、円滑な人間関係の構築をするための場を作ることですね。ようやく先達の先生方の境地に立ててきたのかなとも感じています。

-盆踊りの運営をしていくなかで意識したことは何ですか?

大学祭や他のイベントと違って、あくまでもこれは「教育」なんだと自覚して臨んでいます。つまり、サービスラーニングという授業を受講した学生に何か一つでも学んでもらいたいと願っていますし、そのための準備を事前に入念にしています。

たとえば、本番までの準備を進めて行く上で「盆踊りのメインフィールドとなる大学周辺はどのような人が住んでる地域か」「盆踊りでもっとも効果的な企画は何か」などをリサーチしておく必要があると思っていました。ということで、5月中旬まではリサーチに時間を費やします。

これは戦略の一つでもあって、半期の授業期間のなかで途中に山場もなく本番を迎えようとすると、先が見えずにだらけてしまがちです。そこで、中間に山場を作ろうと思い、企画が上手くいくか、ターゲットにどのように接すればよいのかを一度リサーチして、それから調べたものを中心に実践に移行させました。一度真剣に調べれば「ちゃんと調べたし、本番までもそれが無駄にならないように頑張ろう」と思うかな、と。

誤解を恐れず言えば、準備や本番がうまくいかなかったらそれはそれでよくて、なんでうまくいかなかったのかを検証する場が単に「盆踊り」であると考えています。だから、実は教員の本当の出番は、本番が終わった後の検証の段階なのかなとも感じています。

4. ありきたりじゃない盆踊りを!

-これまでの盆踊りで最も印象に残っていることを教えて下さい。

このようなイベントは同じ教員がずっと担当すると、その人の色が強く表に出始め属人化してしまいがちです。ですので、本当は担当3回目となる第8回で役目は終わりかなと思っていました。しかし、第9回を継続して担当させてもらった理由の一つとして、去年の盆踊り最終盤での盛り上がりが忘れられなかったからというのがあります。

本当は決められた曲順で定時に終わる予定だったんですが、最後の曲となったダンシングヒーローで老いも若きも男も女も、櫓の周りとか関係なく会場全体が大騒ぎしながら踊っていたんですね。それで、曲が終わった後にアンコールが自然と出て、学生やつぼみの会の方々、さらには小さな子どもまでもう一回踊りたいと叫んでいました。そして急遽もう一曲ダンシングヒーローを踊って、第8回鴨台盆踊りが惜しまれながらお開きとなりました。つぼみの会のみなさまから、アンコールの出る盆踊りは初めて、また来年も頑張ってねと言われてとても感動したことは忘れられないですね。このシーンはFacebookに動画として残っていますが、今でも結構感動します。

あと、今まで盆踊りに関わってくれたOBOGが、今年はどうなんだろうと後輩たちがつくった盆踊りを見に来てくれることが嬉しいです。まるで同窓会みたいに、こういうイベント作りを通した縦の関係があるのは本当に良いなと思います。

-今の盆踊りに対して思うことを教えて下さい。

手前味噌ですが本当に大きな地域行事になりました。これも第1回の学生たちの苦労があり、そしてそれ以降の学生たちが盆踊りを継続させようと努力したおかげです。その精神を現在の学生たちが改良を重ねながら受け継いでいます。一方で、学生一人ひとりも盆踊り自体も、まだまだ成長の余地があると感じています。もちろん過去と比べて来場者も多く、非常に充実した盆踊りへと発展しているのは間違い無いのですが、もっともっと面白くできるのではないかと常に思っています。

ありきたりで「どこでもやられているもの」ではなく「ここでしかつくれない尖ったもの」を徹底的に考えてほしいです。「多くの人を呼んだ」「盆踊りが盛り上がった」などの結果も大事ですが、どうすれば良くなるのか、どうすれば盛り上げられるのかと思考する過程が最も重要ではないかと。

担当回数を重ねるうちに、学部学科学年が異なる学生たちが、なんとか時間をすり合わせながら、どのように目標に到達できるのか議論を重ねるというプロセスがものすごく重要だし、貴重だと気づかされました。ルーティーンをこなすだけではなくて、あれもこれもできるんじゃないかと常に考え実践に移すことで、盆踊りと自分自身どちらもアップデートしてほしいです。

-最後にいまの学生に対して一言お願いします。

学生時代も卒業してからも、自分や自分たちが心からしたいことを、とことん貫いてしてほしいな、と。ただ、自分がしたいことを通すためにはそれなりの努力と説得力も持ち合わせていないといけません。それらを身につけるツールの一つが盆踊りの運営であり、それこそ大正大学でしか経験できないことであるとの自負があります。自分自身のために、まずは自分たちが思い描いている盆踊りを、ひと夏かけて実現してほしいと願っています。

聞き手・記事
心理社会学部臨床心理学科3年 石橋郁乃

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