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文化財・考古学コース

出雲見学旅行―考古学・塚田先生ゼミレポート―

  弥生~古墳時代の考古学を学ぶ塚田ゼミ3年生の合宿は、銅鐸、特殊器台、埴輪、鉄、玉造りなどの著名な遺跡と博物館のある島根県・出雲の地でおこないました。1028日~30日、東京からはるばる出かけて行った出雲の旅は、涙あり(?)笑いあり(!)勉強あり(!!)の充実した二泊三日となりました。ゼミ生がまとめたレポートをお伝えします。

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■岡山県立博物館・岡山市埋蔵文化財センター

第一日。東京から新幹線で出発し、午後最初に訪れたのは岡山県立博物館と岡山市埋蔵文化財センターです。岡山県立博物館では、平常展で三角縁神獣鏡や刀剣、特殊器台などが展示されており、岡山県の歴史を知ることができました。岡山市埋蔵文化財センターには、遺物の展示のほかに、石器や土器を触ることができる体験コーナーがありました。実際に遺物を見たり触れたりすることができ、勉強になりました。(M..

岡山市埋蔵文化財センター















岡山市埋蔵文化財センター

 

■松江、出雲市への旅

今回のゼミ旅行でとくに印象に残ったものの一つに電車があります。

岡山から松江へ向かって中国山地を走る「特急やくも」は、独特な揺れが特徴的でした。調べてみるとカーブでも速度を維持したまま乗客は乗り心地が比較的良く走行できる「振り子装置」と呼ばれる機能を備えている電車で、揺れはその代償だそうです。カーブ走行中のトイレの使用は、ちょっとしたアトラクションでした。

松江から出雲大社までの間、宍道湖のほとりを走る一畑電車も、「電車アテンダント」と呼ばれる乗務員の方が車内販売をしていて、観光地ならではの光景が印象に残りました。うとうと寝ていたら、いつの間にか電車の進行方向が変わっていたのには驚きましたが、無事目的地に到着し、予期せぬ道中のできごとも良い思い出となりました。(E..


最初に訪れた出雲大社で記念撮影

 

■出雲大社

第二日。最初の訪問地の出雲大社は、大国主を祀っている日本で最も大きい神社です。私は今回のゼミ旅行で初めて行きました。駅から出雲大社に行くまでの道にはお汁粉や蕎麦が食べられるお店やおみやげ屋さんが続いていて、ついつい寄り道したくなってしまいました。その通りを抜けたところに大きな鳥居があり、道を進んでいくと大きな注連縄が見えてきました。テレビ等でよく見てはいましたが、実際に目の当たりにすると想像より大きくびっくりしました。本殿の前に近年発掘されたかつての壮大な出雲大社を支えた柱の印があり、自分の倍以上ある巨木だったことにも驚きました。(H..


巨木3本を鉄の輪で束ねて一本の柱に!

 

■出雲古代歴史博物館

その後出雲古代歴史博物館に行き、出雲大社に関わる遺物の展示を見ました。出雲はなかなか行けないので、私は特に自分の研究テーマに関係のある勾玉をじっくり観察し、スケッチをとりました。資料や写真でみるよりもとても魅力的で心が惹かれ、昔の人も私と同じような気持ちになったのだろうと思いました。また、館内で上映された映画を見てより出雲の歴史に関心・興味が沸きました。(K..

 

出雲古代歴史博物館の目玉は、なんといっても出雲で発掘された青銅器の展示です。とくに壁一面に荒神谷遺跡で大量出土した358本の銅剣が並んでいる様子は圧巻です。私の研究テーマでもある銅鐸についても、加茂岩倉遺跡で出土した39個の銅鐸が一堂に展示されており、銅鐸の吊り手の部分に顔が描かれたものなど特徴的な絵画銅鐸もありました。限られた時間のなかで夢中で写真を撮ったり、スケッチをしたりと、有意義な時間を過ごすことができました。(M..


輝く荒神谷の銅剣に圧倒される

 

■西谷墳墓群

午後に訪れた西谷墳墓群は山陰地方の代表的な弥生遺跡です。この墳丘墓を上から見てみると、角の突き出た四角形を成しています。このことから、四隅突出型墳丘墓と呼ばれています。出雲大社前駅から一畑電鉄に乗り、大津町駅を降りて徒歩約 20分、丘陵を登った先で私たちを迎えてくれたのは立派な墳丘墓、ではなく「ボールが飛んでくることがあります」と記された野球ボール風の看板(!)。「島根の打線は大砲揃いなのだろうか?」などと考えていると、そのすぐ先に墳丘墓が控えていました。墳丘墓は登ることが可能で、その上から出雲市の街並みを眼下に見ることができます。町の向こうに見える山々は霞がかり、関東平野住まいの私の目には神秘的な光景に見えました。(K..

おとなりが県立高校の野球グランドでした。

 

■出雲弥生の森博物館

 西谷墳墓群の丘のふもとに、出雲弥生の森博物館があります。私達が博物館に着いたときはすでに午後四時を超えており、閉館時間目前でした。出雲弥生の森博物館は、近くに所在する西谷墳墓群をはじめとする出雲市内出土の遺物を展示しています。西谷墳墓群出土の展示品には山陰の土器、吉備の土器や北陸系の土器があり、西谷墳墓群に埋葬された被葬者が三つの地域と何かしら関わりがあったと推測できます。わずかな時間ではありましたが、数多くの展示品があり、見ごたえのある博物館でした。また次の機会にも訪れたいと思っています。(M..



西谷墳墓群から出雲平野を望む

■八雲立つ風土記の丘

最終日の第三日に訪れた八雲立つ風土記の丘資料館は、『出雲風土記』の国引き神話を起源とする意宇郡の中心にあたる地域に立地し、この場所はかつて国庁や国分寺が建てられた出雲の政治の中心地でした。展示の見どころは「見返りの鹿」 と呼ばれる埴輪です。 後ろに首を曲げ振り返っている姿が特徴的で、 見る人によって表情は多面的です。私は、何かに気付き、危機を感じている表情に見えました。他には、足首に武器のついた力士の埴輪や、顎の出ている男子埴輪、変わった頭部をもつ埴輪などもあり、貴重な埴輪と出会うことができました。(..)



見返りの鹿埴輪とご対面

 

■岡田山1号墳

風土記の丘公園にある岡田山古墳群も見学しました。岡田山古墳群は1号墳・2号墳及び5基の小規模な古墳からなり、私達が見学した1号墳では古墳内部の石室を見学させていただきました。古墳内部に入れる機会は滅多にないので、私は岡田山1号墳内の石室の様子を直接確認できたことにとても感動しました。この古墳は重要文化財「額田部臣」の銘文のある大刀が発見されたことで有名です(資料館に展示中)。八雲立つ風土記の丘の展望台からは周囲の様子を一望でき、やはり古墳は建造した権力者の土地全体を一望できる場所に建てられたのだろうと思いました。(K..


岡田山1号墳の石室に入る

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古代出雲の地を駆け足でめぐった三日間でしたが、皆大きな刺激を受けて、遺跡と遺物を見る眼が大きく開いたようです。最後になりますが、島根県立八雲立つ風土記の丘資料館所長の松本岩雄様、所長補佐の高屋茂男様には、お忙しいところ私たちのためにご高配を賜りました。ここに厚く御礼申し上げます。(歴史学科教授 塚田良道)

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