学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

宗教学専攻

日本宗教学会に参加しました

 去る9月7日から9日まで、同志社大学にて日本宗教学会第73回学術大会が開催されました。本学研究室からは発表者の先生・諸先輩のほか、院生ら7名が参加しました。



 学会初日のシンポジウムは「宗教と対話―多文化共生社会の中で―」という題で開催されました。シンポジウムは、国際政治、国際生命倫理、社会福祉の視点からなされました。パネル発表では、宗教研究と諸学問との関係及びその可能性について、現代社会における宗教学の重要性を踏まえて検討されました。パネリストは、同志社大学学長の村田晃嗣先生、同大学大学院グローバル・スタディーズ研究科特別客員教授の位田隆一先生、同大学社会学部教授の木原活信先生の3名でした。コメンテータは、上智大学教授の島薗進先生でした。島薗先生は、宗教研究の視点から、各パネリストの発表に応答する形で議論が進められました。

 議論では、変化し続ける宗教と、文化や科学、政治や国家が、密接な繋がりがあることが指摘されました。しかし、宗教学とその他の研究(国際政治、生命倫理、社会福祉)を結ぶことがまだ十分ではないことも指摘されました。また、国際政治の問題では、東アジアにおける諸問題として、靖国神社や尖閣諸島に関しても議論されました。その中では、近代国際法的な日本の「主権」と、近代以前の中華思想における中国の「主権」という意味の違いも指摘されました。一方で、国際社会における生命倫理の議論や自殺対策では、宗教者だからこそみえることもあると指摘されていました。一方で、宗教に関しては、海外と日本における認識の差異など、課題も指摘されました。宗教学は、「宗教と対話」というものを考えた時、可能性がある反面、課題も多くあることが指摘されました。

 大会2日目、3日目はそれぞれのテーマに部会が分かれて、個人研究発表が行われました。「親鸞」や「日蓮」がタイトルに含まれる近代仏教に関する研究や、宗教間対話をテーマとする部会が多く見受けられました。各部会では、諸宗教に関する研究、東日本大震災における宗教者の活動に関する研究、宗教民俗や宗教と社会に関する研究、キルケゴールやハイデガーなどの宗教哲学に関する研究と、様々な研究テーマによる発表がされていました。

 本大学からは、本研究室博士1年の小林惇道さんが、「仏教教団による戦死者慰霊の展開―忠魂祠堂を事例として―」の題目で発表されました。ここでは、浄土宗が日清戦争の戦死者の為に建設した忠魂祠堂(戦死者慰霊施設)を事例に、仏教教団における戦死者慰霊の位置づけと特徴を考察していました。また、結論では、当時の浄土宗が、戦死者慰霊を通して、国家と教団の関係、近代へ進む教団の在り方を模索していたことも指摘されました。

 また、学会3日目の午後には、本学教授弓山達也先生が代表を務めたパネル発表「新しい宗教研究の地平を拓く―「実践」という場から―」や、本学講師星野壮先生が参加されたパネル発表「日本のカトリック教会の在日外国人支援にみる「多文化共生」」が行われました。

 学会での諸発表は、様々な資料や調査の下に、限られた時間の中で行われています。その為、それぞれの研究内容は要点をまとめられており、極めて濃密な発表でした。また、異なるテーマの発表が各部会で行われ、宗教学における研究領域の広さと、その可能性を感じました。それと同時に、短時間で行われる発表の中で、発表の論点を明確にし、相手に伝え、議論することの難しさも学びました。

 また、「沖縄」と「新宗教」に関する研究を志している私としては、立正大学の竹村一男先生の「沖縄における末日聖徒イエス・キリスト教会」や、筑波大学の門田岳久先生の「200円の聖地―観光化に伴う斎場御嶽の入場管理と公共性―」が、大変勉強となりました。新宗教研究では、天理教や金光教、そして大和教団の研究がありました。発表では、金光教一つをとっても、教祖に関することなのか、教団組織に関することなのかで、資料や方法も大きく異なっていました。

 私は、本学会を通して、同じ地域や題材を取り扱っても、異なる視点と方法論を用いることで、研究の幅が広がることを、改めて感じました。それは逆に、研究の良さは、方法や視点において、如何に先行研究を踏まえた独自性を出すかだと思いました。院生として、そのことを肝に銘じて、自身の研究をしていきたいと思いました。

 ちなみに、長島が参加した発表は、以下の通りです。
・「姉崎正治の日蓮論」
・「新潟市の女性シャーマンについて」
・「ポスト九学会調査の可能性」 など

(文責:長島三四郎)

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