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トークトークトーク~哲学お茶会~

みなさんこんにちは、コンシェルジュの岩下です。

5/23(金)は、松野智章先生によるラーニングコモンズレファレンスが開催されました。今回のテーマは「トークトークトーク~哲学お茶会~」です。

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▲哲学に興味はありますか?

「哲学お茶会」というテーマどおり、会場には松野先生セレクトの紅茶がたくさんやってきました。

リラックスした雰囲気で始まったこの日のラーニングコモンズレファレンスには、実に多くの話題が登場しました。残念ながらここですべての話題をご紹介することはできないため、今回のブログでは松野先生と学生の最初のやりとりを抜粋します。

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▲紅茶の準備をしつつ、哲学談義スタートです。

学生――今日は、ウィトゲンシュタインや言語ゲームの話が聞きたいと思ってきました。少し教えて頂けますでしょうか。

松野先生――授業で取り上げた話題ですね。ここには、授業を受けていない方もいらっしゃいますので、言葉と行為、または、言葉とその言葉が指すモノとの関係について、幅広く皆で考えてみましょうか。例えば、私たちの目の前には机があるわけですが、この机がどのように皆様の心の中で映っているかは、私には分からないわけです。これは、他人の心の中は覗けないという当たり前の話ですね。しかし、絶対に他人の心は分からないはずなのに、皆自分と同じように他人も見ているはずだと多くの人が勝手に決めつけている。

学生――違うのでしょうか。

松野先生――同じだとか違うという基準が得られないのが、この問題のポイントです。哲学者ウィトゲンシュタインは<箱の中のカブトムシ>という比喩でこの問題を説明します。誰もが心の中にカブトムシを入れた箱を持っている。しかし、箱の中は誰にも覗けない。その本人しか覗けない。どんな虫が入っていようとも、その虫をカブトムシと呼び、普通に会話が成り立っている。もしかしたら、ある人の箱には空っぽで何も入っていないかもしれない。しかし、そんな人も、カブトムシという言葉を適切に使え、会話に差支えがなかった場合、箱の中がからっぽだと他人には分からない。多分、空っぽの箱の人にとっても、他人の箱の中は分からないわけで、まさか空っぽではないとは露にも思っていないでしょう。つまり、箱の中のカブトムシがどういったものであるのか、私たちには知る由もないのです。しかし、カブトムシという言葉をつかった会話のやりとりは普通にできている。

学生――箱に何も入っていなかったら、カブトムシという言葉は、さすがに使えないのではないですか?

松野先生――確かに、イメージしにくいですよね。では、コンピュータとの会話のやり取りはどうでしょう?コンピュータには、心がないとされていますが、暗証番号を打ち込むなど簡単なやり取りにも、私たちは他者を感じてしまわないですか?ましてや、人は機械を相手に腹を立てることがありますね。機械からすればまったくのとばっちりなような気もしますよ。なぜなら、機械に意思や魂がないのであれば、機械は命令された通りに動いているだけなのですから。しかし、私たちは思い通りにならないと機械に腹を立てる。もちろん、これは即ち機械に魂があると判断しているわけではない。しかし、機械に魂が”ある”かのように反応してしまっているんです。だからこそ、高水準なアンドロイドに心があるのかと問うSFが山ほどある。

学生――心の中のカブトムシはなくてもいいということですか?

松野先生――「なくてもいい」ということが重要なのではないのです。確かに、個々人の箱の中身は個々人の「カブトムシ」という言葉とは関係性がある。しかし、他人と会話する中で使われる「カブトムシ」という言葉は、個々人が、心の中を覗いても意味がない。つまり、言葉となってしまった瞬間に、「カブトムシ」という言葉が会話の中の言葉となる。

学生――個人的な「カブトムシ」という言葉と会話の中での「カブトムシ」という言葉は違うということですか?

松野先生――いい質問です。少し難しのですが、ウィトゲンシュタインの「言語ゲーム」というアイデアは、まさにこれで、個人的な「カブトムシ」という言葉を私的言語というのですが、私的言語が必ず会話の中での言語に変わってしまう。だって、箱の中のカブトムシがどんなものかということは、他者との間では確認しようがないのですから。つまり、言語は必然的に公的言語というか、これを「言語ゲーム」というのですが、言語ゲームになってしまうのです。なので、言葉の意味を知りたければ、心の中を探すのではなく、人々がいかようにその言葉をつかっているのかを見よということになるのです。・・・・・・そろそろ、胡椒の入ったチャイ風の紅茶がいい感じです。頂きましょう。

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▲さまざまな学科の学生さんが参加してくれました。

というわけで、今回のブログでは松野先生のお話のさわりをご紹介させていただきました。

松野先生はこの他にもいろいろな話題をご提供くださり、参加者との質疑応答も活発でした。今回は参加できなかったという方も、次回以降はぜひ松野先生のエキサイティングなお話を生で体験してみませんか?

次回の松野先生によるラーニングコモンズレファレンスは、6/6(金)13:00~15:00に開催します(いつもと開催時間が違うのでご注意ください!)。

テーマは「ノンフィクションって何?ノンフィクション作家に直接聞いてみよう!」です。ゲストにノンフィクション作家の加藤裕子氏をお迎えいたします。
加藤裕子氏の著作はこちら→http://www.amazon.co.jp/%E5%8A%A0%E8%97%A4-%E8%A3%95%E5%AD%90/e/B004LRRNUI/ref=ntt_athr_dp_pel_1

どなたでも参加できますので、お気軽にお越しください。

それでは ヾ(*'▽'*)o

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