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ラーニングコモンズのブログ

評論系同人誌・ミニコミ誌の世界 第2回 入手法と情報収集~評論系同人誌を楽しむために~

みなさんこんにちは、コンシェルジュの岩下です。

5/27(火)は、寺山賢照先生によるラーニングコモンズレファレンスが開催されました。

前回のラーニングコモンズレファレンスでは、評論系同人誌・ミニコミ誌を通して、製作者が題材に対してどのようなアプローチを行っているかを探りましたよね。

参考「評論系同人誌・ミニコミ誌の世界 第1回 『好きなこと』を研究する人たち」→/wp/wp-content/uploads/learning_commons/2014/05/23-135636.html

今回はそれに引き続き、評論系同人誌・ミニコミ誌の流通史の概略と入手方法を寺山先生に教えていただきました。

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▲今回も寺山先生のコレクションから
濃い目の本を用意して学生さんをお迎えしました。

まずは評論系同人誌、ミニコミ誌がどのように生まれたのか、また時代に合わせた内容の変化、そして流通・入手法の変化について、その歴史を講義していただきました。講義内容について、当日配布された資料を元に簡単にまとめてみます

〇評論系同人誌・ミニコミ誌流通史概略

【戦前期】
近代的ジャーナリズムの成立とともに、大規模出版社の他に個人や小さな団体で新聞・雑誌を出すようになりました。この時代の同人誌といえば主に文芸同人誌を指しています。1925年前後に同人雑誌の最盛期が訪れ、全国で160誌以上が発行されたと言われています。

流通形態としては、文芸仲間同士で回覧する形式のものが多かったそうです。

【戦後~1960年代】
民主化が進み、市民運動のツールとして小規模のメディアを活用する動きが出はじめます。「ミニコミ」という言葉は1950年代末からの安保闘争の中で生まれました。

流通形態としては、政治権力やマスコミに対抗するビラやパンフレット形式が主でした。

【1970年代】
経済発展や社会構造の変化により、環境問題、社会福祉、サブカルチャー、キャンパス誌など、市民運動の外からも多様なジャンルのミニコミが発生します。

この頃の流通形態としては喫茶店などに置かれたり、ミニコミ専門書店の誕生などが特徴として挙げられます。

【1980年代】
学生運動が退潮し、評論系同人誌・ミニコミ誌も政治的主張から個人の表現を重視したものへ変わってきます。また書き手がマスコミへと就職することで商業誌との交流も生まれてきます。

流通形態としては書店・レコード店委託、コミックマーケット等の同人誌頒布イベントの拡大が特徴です。

【1990年代】
DTP(PCを利用した書籍編集)の低価格化・高機能化がすすみ、ミニコミへの参入人数および発行部数が増加していきます。

流通形態としては同人誌専門書店が台頭し、頒布方法が多様化かつ容易化していきます。

【2000年代以降】
インターネットの発達に伴って、ミニコミの作成や宣伝、入手が容易化していきます。

流通形態としては、ネット専業のミニコミ書店、ネット通販の台頭が特徴といえます。

このように、社会状況や出版・IT技術の進展によって、ミニコミ誌の内容や流通の仕方が大きく異なることが説明されました。

また、現在のミニコミ誌の購入の仕方として、同人誌専門書店や大規模書店、即売会、通信販売など、各種の購入方法とその特徴について説明がなされました。

特徴的だったのが即売会での買い方です。「カタログ」と呼ばれる冊子に、同人誌発行者が発行物の説明をする「サークルカット」が掲載されており、その情報を元に購入予定を立てる、というものです。日本最大の同人誌即売会「コミックマーケット」のカタログを寺山先生が持ち込んでいらっしゃいましたが、なんと1400ページもあるそうです。

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▲ラーニングコモンズにやってきた評論系同人誌・ミニコミ誌。
中にはあのテレビ番組に登場した有名本も!

さて、評論系同人誌・ミニコミ誌の流通史と入手方法を学んだところでお楽しみの読書タイムです。

参加者たちは、思い思いに本を手に取って感想を言い合います。中には、初めて手にするコミックマーケットの分厚いカタログに興味津々の参加者もいらっしゃいました。

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▲女性にはきれいな色使いの本が人気。

寺山先生によると、分厚いカタログの中の小さなスペースに記載された情報を元にサークルを選出し、実際に面白そうな本にたどり着くのは大変な作業なのだそうです。

そのサークルはカタログの中のスペースにどんなイラストを描いているのか?どんなコメントを載せているのか?レイアウトは?字の丁寧さは?テーマは伝わってくるか?webサイトは持っているか?・・・・・・こうした自分なりの選別基準を設けることが大切とのこと。

しかし、このようにがんばって探し出した「面白そうな本」が本当に「面白い本」である割合は、数冊に一冊ほどだそうです。それでも、面白い本に出合える可能性がある限り評論系同人誌・ミニコミ誌探しはやめられない、と寺山先生は仰います。

そして実はレポートを書くにあたっての資料探しでも、同じことが言えるのだ、とさらに続けます。

  • 膨大な文献情報を自分用のリストに作り変えることが大切であること
  • 事前のリストに挙げられた本がすべて使えるわけではないということ
  • ネットを過信せず、足で資料を探すこと
  • 本は結局読まねば内容がわからない。たくさん読むことで「絞り込む力」がつくということ

寺山先生による次回のラーニングコモンズは、6/11(水)14:50~15:50に開催します(いつもと開催時間が違います。ご注意ください!)次回は「評論系同人誌・ミニコミ誌の世界 第3回」を予定しています。お楽しみに!

それでは、また ヾ(*'▽'*)o

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