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綜合仏教研究所

【開催御礼】公開講座「十王信仰の展開ー道教の地獄救済儀礼ー」

綜合仏教研究所では、2月7日に田中文雄先生(真言宗豊山派総合研究院 主任研究員)をお迎えし、標記の講座を開催いたしました。

以下、倉西憲一大正大学非常勤講師の報告レポートです。

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 今回の公開講座では、道教研究の第一人者である田中文雄先生より「十王信仰の展開ー道教の地獄救済儀礼ー」と題したご講義を賜りました。
 日本の仏事「回忌法要」は、中国の十王法事にその端を発しており、また日本の「十三仏信仰」への展開にも繋がります。この十王信仰は、中国仏教の中からおこっているが、中国的な神々がそこに列しています。こうした信仰が、道教の死者儀礼に取り入れられ、独自に展開していきました。道教の死者儀礼を解明するには、この十王信仰と結びついた所謂「十王文献」をひもとく必要性があります。田中先生は、緻密な文献資料精査をおこない、道教における死者儀礼の歴史的展開および文化的な背景をわかりやすく講義してくださいました。
 まず、道教儀礼を理解するための導入として道教儀礼の全体像を、さらに、その儀礼の持つ空間観念をお話し頂きました。そして、本講義の主題である十王信仰の始まりと展開について様々な関連資料に基づいた研究成果をお示し頂きました。先生の結論を簡単にまとめさせて頂ければ、道教における十王信仰は、仏教の模倣から始まっているが、十王信仰を基にした死者儀礼の完成に際しては、黄籙齋の死者儀礼システムと混入し、道教独自の儀礼展開をしたことが文献精査により窺い知ることができるとのことでした。
 本講義では、その主題である道教の死者儀礼について大変興味深い事柄をお教え頂きましたが、それだけはでなく、文献学に携わるものにとって第一次資料(道教の場合は『道蔵』など)を懇切丁寧に読み取っていく作業の大切さをお示し頂きました。
 

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ご来場いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

綜合仏教研究所では、今後も研究の第一線で活躍されている先生方を講師としてお呼びする予定です。予約不要・参加費無料ですので、皆様ぜひふるってご参加ください。

綜合仏教研究所事務局

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