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綜合仏教研究所

【開催御礼】特別講座「石刻資料を用いた 中国中古仏教史研究 -その方法と意義-」

綜合仏教研究所では、京都大学人文科学研究所准教授の倉本尚徳先生を講師にお迎えし、全5回の特別講座を開催いたしました。

 以下、林田徹順さん(大正大学大学院)の報告レポートです。

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令和5年の5月から7月にかけて綜合仏教研究所で開催された「石刻資料を用いた中国中古仏教史研究 ―その方法と意義―」を受講させていただきました。

 ご講義をいただいたのは、京都大学人文科学研究所准教授倉本尚徳先生です。講義には、大勢の研究者が聴講し、倉本先生の講座への高い関心が伺われました。

 本講座では、先生が実地調査をされた体験を交えつつ、「石刻資料」、特に中国の南北朝から隋唐時代にかけての中国中古仏教史の石刻資料を中心に、研究の意義と重要性、文物資料としての性格や特徴、研究方法についてのご講義をいただきました。

倉本先生によると、中国では改革開放以降、考古発掘や現地調査が盛んに行われており、新出石刻が既存のものとともに整理・紹介がされるようになったそうです。そのなかには仏教に関わるものも多数存在し、当時の資料として非常に重要になるようです。

 そのような状況を背景として、第1回、第2回では、石刻資料の伝統やこれまでの研究、石刻資料の探し方などをご講義いただきました。石刻資料の伝統では、石刻が秦以前から近代まで、どのような変遷をたどってきたのかをご講義くださいました。また、日本や欧米の美術の分野でどのように整理がなされてきたのをご紹介いただき、そして、石刻資料の資料集やデータベースなど、石刻資料の探し方についてもご紹介いただきました。

第3回以降は、造像記や石刻経典、石碑などの仏教石刻が主に取り上げられ、各資料の特徴や代表的事例についてのご講義をいただきました。例えば、造像記の講義の中では、インドの仏教銘文には生天や浄土往生などの語句は少なく、現世利益などが多くみられるが、中国の北魏時代になると「上生天土」や「託生西方妙楽国土」などの語が見られるようになり、そして北斉の時代になると「阿弥陀」の語が現れ、往生浄土思想が見られることなど具体的にご講義いただき、石刻資料を扱うことで当時の流行を把握することができることが理解できました。

また、講義の際には、パワーポイントで実際の石刻を紹介されるだけではなく、先生が所持されている貴重な拓本をご持参くださり、実際に拝見させていただきました。本講座を通じて、仏教を学ぶ上で石刻資料がいかに重要なのかを再認識することができました。





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貴重なご講義を賜りました倉本先生と
ご来場いただいた皆様に厚く御礼申し上げます。

綜合仏教研究所では、今後も研究の第一線で活躍されている先生方を講師としてお呼びする予定です。
予約不要・参加費無料ですので、皆様ぜひ、ふるってご参加ください。

綜合仏教研究所事務局

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