学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

DAC(総合学修支援機構)

FD研修会「授業実践研修」を開催しました

9月5日(水)に「授業実践研修」が開催されました。
この研修は全教員を対象としておりますが、新任教員FDプログラムの第7回研修会にも位置づけられています。
 
今回の「授業実践研修」では、社会福祉学科の田幡恵子先生、表現文化学科の山田潤治先生より、学生の主体的な学びを促すさまざまな教育実践事例をご紹介いただきました。

まずは田幡先生より、授業実践事例をご報告いただきました。
田幡先生は社会福祉学科にて、『社会福祉特講1・2・3』という授業を担当されております。この授業は学部2年生~4年生を対象とした通年開講の授業で、学科では社会福祉士の国家試験対策講座として位置づけられています。
この授業の明示的な目標としては「学生が社会福祉試験に合格すること」としていますが、田幡先生が考える隠れた目標としては、「①学習者を育てること」「②大正大学で学んで良かったと学生に思ってもらうこと」とのことです。社会福祉試験に合格後、社会人になってからも常に新しい知識を取り入れることができる学習者になってほしい、そして社会福祉士になった学生にも、別の道に進んだ学生にも、卒業後には大正大学で4年間過ごして良かったと感じてほしい、という先生の思いが込められた目標です。
 

田幡先生からの授業実践事例報告
  
田幡先生は2013年から本学に着任され、1年目の授業での経験を通して「可能性のあることは何でもやってみよう」と考え、授業改善に取り組み始めたそうです。
まずは学科によるバックアップとして、学科教員の全面的な支援を受け、他科目との連携を強化させました。これにより、学生は各学年で学んだ1年間の学習内容を田幡先生の『社会福祉特講』で復習し、国家試験対策につなげることができます。
次に、田幡先生は授業運営の効率化や学生の意欲向上、学習内容の定着・深化、学習時間の増加のために、さまざまな方策を講じられました。以下、研修内で参加者からの質問・反応が多かったものを抜粋して記載いたします。
①各学年の開始時に、オリエンテーションを実施(学生が3年間にわたる学修の流れをイメージできるように)
②座席指定(私語が劇的に減少)
③「通い袋」を導入(小テストなどの回収・返却がスムーズになり時間短縮)  
④「本日のお品書き」を板書(授業の各回の内容と目標を明示)
⑤「シャトルカード」の導入
授業に関係あること(振り返り、質問、愚痴など)、ないこと、何でも記入させる。教員は次回の授業までに全員にコメントを付け、返却する。次回授業は、シャトルカードに書かれた質問への回答から始める。
⑥「合鴨の会」の活動を推奨
国試合格を目指す学生の自主学習組織である「合鴨の会」の活動を補助。
⑦「スクラッチカード」の導入
ゲーム要素を取り入れるため。カードに書かれた解答の上から修正テープを貼り、解答を隠す。学生は問題を解き、スクラッチを削って自分の解答が正解かを確認する。
 
田幡先生のお話しの中で筆者が印象的であったのは、「資格取得を目指す学科、科目であるからといって、全学生のモチベーションが常に高いわけではない。だから教員は工夫が必要。」という言葉でした。田幡先生は授業内外において工夫を多々取り入れながら、学習の質の担保と、学生のモチベーションの向上を図っていらっしゃいました。
 
  
次に山田先生より、授業実践事例をご報告いただきました。
山田先生は、クリエイティブライティングコースのワークショップにて「ルーブリック評価」を活用されています。コースの特性上、学生の文章技能の向上と経験値上げが授業の目標となるため、学生は作品を創作しては修正するという工程を何度も繰り返します。
一方で先生は、学生の作品に対する評価のフィードバックを一人一人にすることとなりますが、それにはとても時間がかかり、つまずくポイントはたいだい同じなので何度も同じ文言を手書きすることが多かったそうです。また、毎回の課題の意図を理解せずに作品を書く学生も多く、それらが課題と感じられていたようです。
そこで山田先生は、評価指標を予め明示することと、講義時間内で①教員による学修評価、②学生による自己評価、③学習成果のフィードバックを効率よく行うため、また持続可能な授業運営(教員の労力を最小限におさえるため)のために、ルーブリックを用いられたそうです。


山田先生からの授業実践事例報告


授業初回で配布する冊子。
全授業回分の授業内容、課題内容、評価指標を明示している。

山田先生は、学生の自己評価の重要性を説かれていました。ルーブリックを使って学生の自己評価と教員の評価を合わせ、評価結果の違いは何かを説明します。これにより学生は自身の作品のどの部分が高評価だったのか、何が足りなかったのか、事後学習として何をすればよいのかを掴んで講義を終えることができます。この点は、正しく「自律的学習を促す授業」であるといえます。
 
先生方の実践事例報告を伺ったあとは、グループに分かれて意見交換をしました。ご自身の授業でも活用できそうな工夫、活用する際の懸念点、すでに授業内で行っている工夫等を話し合っていただきました。
田幡先生、山田先生には各グループでの話し合いに参加いただき、参加者からの工夫に関する質問や悩み相談にお応えいただきました。
 
参加した先生方は、田幡先生、山田先生に積極的に質問されていました。
 
今回のFD研修では、2名の先生より大変貴重なお話をお伺いすることができました。両先生が試行錯誤のうえ工夫された教育手法を参考に、参加者の先生方には今後の自身の授業に活かしていただくきっかけやヒントにしていただきたいと思います。


次のFDは、10月24日の第7回FDセミナーです。次年度からシラバスの記入要領が変更になります。これをきっかけとして、シラバスに求められている役割の再確認と、次年度の変更点等をお伝えする研修会となります。開催後には、こちらのブログにて報告いたします。


小幡誉子

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