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仏教学コース

仏教学科ブログ 智慧の話2 西村実則先生

ブログ智慧の話にようこそ! 
 

仏教学科の先生方は、どんな研究をしているのだろう?
学部の講義の内容では、どんなことを専門に研究されているのか分からないかもしれません。
仏教学の研究は、インド、中国、日本のみならず、仏教の伝播した場所や言語の研究。その各時代の研究、経典の研究、また仏教に関係した人物、信仰形態、仏教から派生した文化(美術)などなど、とても一言ではいえません。
先生方がどんな研究をされているのか知るためには、これまでの研究論文や著作を当たるのが良いと思います。
nishimura.jpgのサムネイル画像そこで、最近著作を出版された西村実則教授へのインタビューをご紹介します。
先生がこれまでどのようなことをされていたのかを垣間見ることができます。

ちょっと難しい言葉もでてきますが、最後まで読んで下さい<m(__)m>
ここからは、米澤嘉康先生が担当します。

                    (仏教学科助手 池田そのみ)

 

今回紹介しますのは、西村実則先生の『ブッダの冠 仏・菩薩の持ち物〈考〉』(大法輪閣 2013年6月刊)です。
本書は、『修行僧の持ち物の歴史』(山喜房佛書林 2012年12月刊)の「ダイジェスト版」だそうです。

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西村先生は、『アビダルマ教学 倶舎論の煩悩論』(法蔵館  2002年03月刊)によってアビダルマの専門家としても知られています。さらに、最近では、 『荻原雲来と渡辺海旭 ドイツ・インド学と近代日本』(大法輪閣 2012年04月刊)という著作も出版されています。

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西村先生に、米澤がインタビューしてみました。
 

米澤:執筆のきっかけはどのようなものでしたか?
 

西村:ずっと、アビダルマの研究を続けてきましたが、留学をきっかけに律文献 も扱うようになりました。その内容、特に、戒律と教団生活についても興味をもつようになりました。
 

米澤:西村先生は、グスタフ・ロート(Gustav Roth)先生に師事なさいましたよね?
 

西村:そうです。ロート先生の下で、マンツーマンで律文献を写本から読む機会が得られました。本当にインドのことが大好きな先生でした。ちなみに、ロート先生の記念論文集は、3冊も出版されているのですよ。
 

米澤:そうですか。90歳の記念論文集には、写真も掲載されていますね。
さて、戒律と教団生活について留学中からご興味をもたれたとのことですが、『修行僧の持ち物の歴史』や『ブッダの冠』といったご労作はどういった経緯で誕生したのでしょうか?

 

西村:最初の興味は、「香」でした。初期仏教において、「戒が香である」と説かれていますが、物としての香は不要と考えられていました。しかし、時代が経ち、在家者たちが衣食だけではなく、香も布施として提供されるようになりました。それを拒否せずに、受け容れ、僧院内を清めるためなどのために、香が日常的に使われるようになったのです。
そして、それ以外のものについても取り上げてみようと考えたのです。
その中で、特に興味深かったのは「数珠」です。
数珠は、原始仏典には登場しません。仏教に取り入れられたのは、紀元後4~5世紀ころ、ヒンドゥー教の影響だと考えられます。
ちなみに、浄土宗では、在家は伝統的に二連の数珠を用いています。これは、陰陽師が2つの連ねた数珠をもっていたのに由来し、法然上人ご自身はそれを使用しませんでしたが、弟子たちにはその使用を黙認というか、むしろ推奨したようです。
冠については、いつからかぶるようになったのか、その原語であるウシュニーシャは、普通、髻の意味が一般的ですが、冠の意味もあることは注目すべきだと思いました。
戴冠ということでいえば、釈尊の太子時代の姿を想定したものであるか、転輪聖王のイメージの投影だと考えられます。タイやミャンマーで王の衣装をまとうブッダはとても興味深いです。
特に、『ブッダの冠』で新たに取り上げたのは、戴冠しているばかりでなく、衣類は下着姿であるということです。そうした姿は、夢違観音や聖観音に見られます。とても珍しいお姿といえるのではないでしょうか?
最後に、水瓶についても紹介しましょう。もともとはバラモンの持ち物でしたが、実用的な理由で使われるようになったようです。荒野で水がなかったときのためとか、用便の後処理のためなど、の理由です。

 

米澤:ほぼ,『ブッダの冠』の内容を網羅する説明をしていただき,ありがとうございました。さいごに、これから読もうと思うみなさんへのメッセージをお願いします。
 

西村:これまで、仏具・装身具-個人的に、こうしたことばは好みませんが-について、文献の典拠を示しながら説明した著作はなかったと思います。実際に、そういった反響もいただいています。これからは、文献に基づいた研究成果が次々と必要となると思います。
 

                                 文責:米澤