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仏教学科ブログ 智慧の話3 卒業生大森貫太郎(俊貫)さん

仏教学科ブログ・智慧の話(ちえのわ)へ、ようこそ!

 

いきなりですが質問です!

好きな仏像はありますか?あるいは知っている仏像は何ですか?

おそらく「奈良の大仏!」(東大寺・毘盧遮那仏)と答える方が多いと思います。

その大仏と人気を分けるのは、あの「阿修羅像」ではないでしょうか。

少年のようなすっきりした身体と、眉根に憂いのあるお顔が日本人好みといわれ、ファンクラブもあるとか。

 

前置きが長くなりましたが、あの阿修羅像があるのは、奈良の興福寺(法相宗大本山)というお寺です。今回は、6月にその興福寺で出家した新人のお坊さんを紹介したいと思います。今年3月、わが仏教学科を巣立った大森貫太郎さんです。

仏教学科に在籍しているのは、寺院の子弟ばかりではありません。概ね半数近くは、在家(一般の家庭)の方です。

大森さんも在家で、仏教学コースに入学しました。

仏教学を学ぶことを志した理由を聞くと、

「中学から高校時代に自分の心の中で紆余曲折があり、将来に不安を感じ始めた時、思想や哲学、宗教などの話を聞く機会があったのです。日本人は古くから神仏を畏れ敬い生きてきたことを知りました。すると、自分が幼い頃より当たり前のように仏壇やお寺では手を合わせていた感覚が、まさにこれなのだと思いました。そこで仏教というものを深く知りたいと思ったことが入学のきっかけといえます。」

と教えてくれました。仏教について関心があったということは、入学前から勉強していたのでしょうか?

「関心はあっても、仏教学については何も知らない状態で入学しました。講義を受け、文化活動に参加することで初めて仏教に触れた感じです。そして何より先生方との出会いが私にとっての仏教の世界を大きく広げてくれました。」

このような考えを膨らませながら4年間の大学生活を過ごし、大森さんは出家することを決心しました。

「そもそも自分の中心に仏教を据えたいと考えておりましたので、仏門に入り、仏様の教えを伝えることができたらと思っていたのです。そこで、ゼミを担当して頂いていた廣澤隆之先生に相談に乗って頂きました。」

仏教学科のゼミは、専門研究Ⅰ~Ⅳを履修し、その中で卒業論文・制作を作り上げていきます。ゼミの先生とは、とっても親密になり、研究テーマのことだけではなく、将来のこと、恋愛、身の上相談までしている学生もいるとか。

廣澤ゼミでは、卒業した先輩方も交え、楽しくお酒を酌み交わす機会が多いようです。

大森さんにとっての廣澤先生は、学問だけではなく、心の問題の師ともいえるのでしょう。

それからご縁を手繰り、興福寺の僧侶となるために奈良に行くことになりました。

願えば誰もが出家できるわけではなく、僧侶として足るべき人かということを十分に見定められます。

いよいよ6月、興福寺本坊にて出家の儀式といえる得度式が行われました。得度とは俗世から離れ、仏門に入ることで、剃髪し僧侶としての名前をもらいます。

この得度式の様子をお寺の了解を得て、少しだけお見せいたします。

戒師(戒を授ける師僧)法相宗大本山興福寺管主 多川俊映大僧正によって、厳かに行われました。

【得度式次第】

・三礼~散華法要

・受者、出家の願文

・氏神・父母への別れの礼拝

・丁子湯で身を清める

・衣を着て、十方佛に礼拝

・剃髪

・法名(封書)を授かる

・袈裟を授かる

・佛礼

・三帰(佛・法・僧)

・授戒(沙弥十戒)

・経典読誦(般若心経・唯識三十頌)

・廻向文

・三礼~終了

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名前が「貫太郎」から「俊貫」になりました。指導教授の廣澤先生もお祝いに駆け付けました。

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得度式を終えた感想を聞いてみました。

「お世話になった方々をはじめ出会った方全てに感謝したいです。スタートしたばかりなので、一層気を引き締め精進していきたいです。とくに法相教学や興福寺の歴史を学び、自分が興福寺の僧侶としてどうあるべきかを見極めなくてはならないと思っています。」

大森さんにとっての夢はなんでしょう。

「自分の力が及ぶ限り、僅かでも次の世代に仏の教えを残すことができたら良いですね。」

新人僧侶としては、立派な答えではないでしょうか。

お寺に生まれ育ったわけではありませんが、日々の生活に仏教を感じとり、大正大学仏教学科を選び、学び、出会い、ついには出家の道を歩むことになりました。

早朝に各お堂の前で読経をし、その後は掃除や片付けなどの雑用をして1日を終えるそうです。観光客も多いので、大忙しの毎日を送られていることと思いますが、自ら発心したことを全うし、大きな夢に向かって邁進されることを祈っております。

 

仏教学科を卒業してどうするのか、迷い悩む人もいます。大森さんのように在家から出家する方はめずらしく、大体は一般事務や営業、飲食関係など多種多様な道をすすんでいます。就職が大変だといわれる現在、望みが叶うことはことは少ないのかもしれませんが、仏教学科で得たものを抱き、社会に出て、素敵な人生を歩んでほしいものです。

今回も長らくのお付き合いありがとうございました。<m(__)m>

興福寺風景(貫太郎君).jpg

さいごに、ひとつ情報です(^○^)

今回紹介した大森さんのいる興福寺のイベントが、東京で開催されます。

「興福寺創建1300年記念 国宝興福寺仏頭展」が東京藝術大学大学美術館で開催されます。

白鳳仏の代表作ともいえる仏頭がやってきます。歴史の教科書にのっていましたよね!

是非とも足を運んで、仏教文化の美しさに触れてください!(9月3日~11月24日まで) 

 

                           仏教学科助手 池田そのみ

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