学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

仏教学コース

【卒業生の活躍】桜井和香子さん

はじめまして、静岡県の伊豆・下田市にあります上原美術館で学芸員をしております桜井と申します。私は大正大学の仏教学科を卒業してかれこれ二十年近くになりますが、その間、この仕事を続けております。

勤務先の上原美術館のことを少しご紹介させていただくと、当館は約40年前に上原仏教美術館として開館し、2017年には隣接の上原近代美術館と一つとなった上原美術館としてリニューアルオープンいたしました。大正製薬株式会社の名誉会長・上原昭二氏の近代絵画コレクションを中核として、ルノワールや梅原龍三郎、仏像、古写経など、絵画と古美術の両方を楽しんでいただける個人コレクションの美術館です。美術館では展覧会のほか、教育普及活動や調査などさまざまなことを行っています。



また開館以来、伊豆半島の仏教美術(主に仏像)の調査を行っており、こうした活動は当館の特色の一つとなっています。この調査成果をもとに毎年1回、特別展を開催しています。2022年度は「無冠の仏像」と題した特別展を開催いたしました。本展はまだ文化財指定になっていないものでも、素晴らしい作品は数多くあるということを広く知っていただき、地域の文化財へ目を向けてもらえれば、という趣旨のもと開催しております。また出品作品は当館で調査をした多くの仏像の中から最新の調査を反映した内容になっています。

写真は主任学芸員と一緒に仏像の調査をしている場面です。こうした調査成果が展示へと結びついています。



調査でお寺に伺うと文化財だらけです。仏像はもちろん、書画、襖絵、文書、書籍、水引柱巻、石造物、建物……その中には100年~200年前のもの、もしかしたらもっと古いものも今に伝わっています。しかも間近で体感できるというのはなかなかないことだと思います。例えば江戸時代に描かれた涅槃図を今でも涅槃会で懸けているお寺さんが多いと思いますが、200300年前に描かれたものが、ガラスケースなしで拝見できることのすごさに気づくと、生きた文化財を目の前にしていると実感できます。写真はあるお寺から一時お預かりした涅槃図。江戸時代後期に描かれた作品で、今も涅槃会で懸けられているそうです。

最近は文化財の背景に地域の歴史のこと、昔の地形のことなど全体像を見て、この作品はこの地域でどういう位置づけなのか、ということも考えるようになりました。

私の在学中にはなかった仏教文化遺産コースですが、「モノ」を核にしてそこから広く文化や歴史を学ぶことが出来ると、より深い学びになるのではないかと思います。ぜひ自分の身近なものから、いろいろなものに興味をもって接してみてください。

 

 

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