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文化財・考古学コース

文化財の調査-醍醐寺調査の報告-

 副島弘道研究室では、長年、醍醐寺の仏像を中心とした文化財の調査と研究を行っています。今回は、当研究室が行っている醍醐寺の文化財調査についてご紹介したいと思います。

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  醍醐寺は京都府伏見区にある真言宗醍醐派の総本山で、笠取山山頂に広がる上醍醐と金堂や三宝院がある麓の下醍醐の上下の伽藍にわたる広大な寺院で、特に豊臣秀吉の時代に花見の舞台となったことで広く知られています。創建は聖宝が上醍醐に仏堂を建立した9世紀の後半とされ、以降さまざまな変遷を経て、発展してきました。


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仁王門には重要文化財の金剛力士像が安置されています。
桜の季節になると、たいへん賑わいます。

 醍醐寺には今も多くの堂宇が建ち並び、10万点に及ぶ聖教・文書、創建期に遡る貴重な仏像を伝えています。総合調査は大正3年(1914)から行われており、当研究室の副島先生も研究員として参加しています。
 調査と研究の成果は、先生の論文や研究室の院生・学生の修士・卒業論文で報告がされてきました。近年の研究成果として、現在、東京国立博物館に寄託されている聖観音菩薩像とされてきた木彫像は、平安時代前期にあたる9世紀の著名な作品でありますが、この作品とよく似た虚空蔵菩薩像の姿が描かれた江戸時代の版木が下醍醐の菩提寺から発見され、この版木の発見がきっかけとなり本像の研究が進み、本像は虚空蔵菩薩像として造像された可能性が高いことが明らかとなりました(副島弘道「菩提寺虚空蔵菩薩像版木と醍醐寺木造聖観音菩薩立像」(『川勝守・賢亮博士古稀記念東方学論集』2013年、汲古書店))。これらの研究成果によりこの春、虚空蔵菩薩立像(旧名称:聖観音菩薩立像)は重要文化財から国宝に格上げとなりました。

 このような伝統と格式のある調査に大学院生、修了生、学部生が参加することは、文化財の知識を深めるだけにとどまらず、文化財調査のそのもののあり方について考えるきっかけとなり、個々人にとって大きな影響を与えています。

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  さて、2015年3月に醍醐寺の上醍醐にある開山堂、地蔵堂安置諸像7件8躯の調査と撮影を行いました。

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手前に見えるのが、開山堂、奥に見えるのが地蔵堂です。
 開山堂は重要文化財に指定されています。

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上醍醐にある開山堂までは約1時間かかる山道を歩いて登ります。

 

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彫刻の調査では、細かな寸法、形状、構造、保存状態などを調べます。
 作品によっては、銘文や納入品があるので、これも調書を取ります。
 

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彫刻をはじめとする文化財を研究するにあたって、写真は大切な資料となります。
そのため、わずかな光の具合で作品の表情が変わってしまう撮影は、技術の習得が必要です。

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   今後も、調査は継続して行う予定です。


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三宝院と紅梅

 当研究室では、醍醐寺以外の調査も数多く行っています。これらの経験を活かし、実証的な卒業論文、修士論文、博士論文を目指して努力していきましょう!

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