学部・大学院FACULTY TAISHO
文化財・考古学コース
2016年「ゼミ合宿」の報告-群馬・新潟方面-
御堂島先生の3年生専門演習受講者は、平成28年9月8~10日に「ゼミ合宿」を行いました。今回の目的地は、群馬県の岩宿博物館と、新潟県の長者ヶ原考古館、フォッサマグナミュージアム、十日町市博物館です。その様子を先生にご紹介いただきます!
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〔1日目〕
1日目は岩宿博物館を訪ねました。岩宿遺跡は日本列島で初めて旧石器時代の存在が確認された遺跡で一度は行っておきたいところ、また石器作りや槍投げなどの体験学習も学生に好評なことから、ここ3年間、毎年ゼミ合宿で訪れ、館長さんはじめスタッフの方々には大変お世話になっています。
台風13号からかわった温帯低気圧の影響で天候が悪く、雨が降ったり止んだりという状況でした。そのため、雨が止んでいる合間を見て、先に体験学習を行い、その後、現地や展示を見学することにしました。
まずは、黒曜石の剥片を鹿の角を使って薄く割っていく「石槍」作りです。石槍作りの名人である小菅館長の実演を見た後、指導を受けながら、各自実際に製作を行いました。
岩宿博物館での石槍作り体験
途中で折れてしまったり、左右対称にならなかったり、分厚いままであったりと、熟練者のようにはいきませんでしたが、皆何とか仕上げることができました。続いて屋外で石槍を着けた槍の手投げ、投槍器(とうそうき)を使った槍投げ、弓矢の試射を体験しました。投槍器を使った槍投げ(槍に羽根を着けたもの)の、予想外の速さと距離に皆驚きました。
その後向った、旧石器の存在が確認された昭和24年の発掘調査地であるA地点では、当時の調査の様子などを詳しく説明していただきました。博物館では、そのとき発見され、学史上著名な「岩宿Ⅰ石器文化」、「岩宿Ⅱ石器文化」の石器群などを見学しました。
岩宿遺跡A地点で説明を聞く
小雨には降られましたが、幸い予定していた全行程を行うことができ、岩宿遺跡や旧石器時代に関する知識と関心を増すことができました。
岩宿博物館の方々に別れを告げ、本日の宿泊地、高崎へと向いました。
〔2日目〕
高崎から糸魚川に移動し、まずはヒスイ海岸(糸魚川海岸)へ。強い日差しが照りつけていましたが、温帯低気圧の影響で風が強く、波も高かったため、残念ながら浜にでることはできませんでした。それでも消波ブロックの内側の安全な場所で、ヒスイはさすがに見つかりませんでしたが、波に磨かれた硬質の石を採取することができました。
糸魚川海岸でヒスイ探し
昼食後、バスで長者ヶ原考古館へ向いました。長者ケ原考古館には、長者ケ原遺跡をはじめとした糸魚川市内の遺跡の出土品が展示されています。長者ヶ原遺跡は、石斧とヒスイ製玉類の製作と流通の拠点となった縄文時代中期の遺跡です。昭和46年に、ヒスイ製大珠等の製作遺跡として価値が高いということで国史跡に指定されています。考古館では、学芸員の方の説明を聴きながら、ヒスイ製玉類や市内の井の上遺跡から出土した縄文時代中期の男女一対の人物文様のある非常に珍しい土器などを見学しました。その後、考古館から少し下ったところにある長者ヶ原遺跡へ向いました。現在は生い茂った樹木で見えませんが、佐渡や能登半島も見渡せる眺望の良い場所に立地しているとのことでした。
長者ヶ原遺跡での見学
そこから徒歩で、近くにあるフォッサマグナミュージアムへ移動しました。糸魚川市は日本列島を横断する巨大な台地の裂け目である「フォッサマグナ」の西の境界上にあり、平成21年には日本で初めての「世界ジオパーク」に認定されています。ヒスイをはじめ多種類の鉱物・鉱石・岩石、フォッサマグナを巡る日本列島の成り立ちなどの展示がなされていました。学生たちは白・黒・緑・ラベンダーなど各種のヒスイやフォッサマグナと日本海の形成の映像に見入っていました。先ほど海岸で採集した岩石の種類は、館長さんが鑑定してくださいました。その際、「ヒスイと出会うコツ」も教えてもらいました。学生からは「先にコツを聞いてから海岸に行くべきだった」との声もあがりました。
この日は、糸魚川駅近くのジオパークの名前のついたホテルに宿泊しました。
〔3日目〕
糸魚川駅から「越後トキめき鉄道日本海ヒスイライン」と「北越急行ほくほく線」で十日町駅に。3日目の目的地は、十日町市博物館です。ここは「雪と織物と信濃川」をテーマにした博物館ですが、笹山遺跡から出土した国宝の火焔型土器や王冠型土器が展示されています。展示室に入ってすぐにある火焔型土器や王冠型土器の見事な造形に学生たちも圧倒されていました。そのほかにも、縄文時代にもあったアンギンや各種の植物性繊維、雪国の民具など興味深い展示が行われていました。
館を出て、向かいにある遺跡ひろばで記念撮影をし、帰路に着きました。
十日町市博物館に隣接する遺跡ひろばの復元家屋前で記念撮影
3日間の合宿で、各地の遺跡や遺物、様々な展示、体験学習など多くのことを学ぶことができました。今回学んだ知識や経験を今後の学修や来年の卒業論文の作成にも活かしていって欲しいと思います。ゼミ合宿にあたってお世話になった各施設の皆様に改めて感謝申し上げます。
(記:歴史学科教授 御堂島 正)