学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

文化財・考古学コース

九州の古代遺跡と博物館をめぐる ―塚田ゼミ合宿報告―

塚田ゼミの合宿は2024129日~31日、2泊3日の福岡・佐賀の旅だった。
コロナ禍による外出自粛により行動制限の多かった時期に入学した私たちにとって、大学の外に出て学ぶことや仲間と食事をともにすること、楽しい時間を共有することは新鮮な体験であった。皆が集まり、ともに学ぶ一つのグループとしての絆を深める良い機会になったと思う。
この旅行では、実物を見ることや実際の場所に行く経験を通して、資料を参照するだけではわからない「体感」を得ることができた。金印出土地から見渡せる海と港、吉野ヶ里遺跡の物見櫓の上から見た遠くまで広がる弥生時代のクニの姿、手のひらに収まるほどの小ささでありながら今も鮮やかな金色の存在感を放つ漢委奴国王印…情報として知るだけでは得られない感動を味わうことで、知識をより印象深くリアルなものにすることができた。このような実体験の喜びを忘れず、今後の研究の糧としていきたいと思う。(大日向)



        図1 塚田ゼミの九州移動ルート

■第1日 志賀島金印出土地
福岡市志賀島の金印出土の地はよく整備された、こじんまりとした公園で、正面に大きな石碑が建てられていた。海に面した山の斜面に沿うように通路があり、頂上は展望広場となっていて、そこから博多湾を一望することができた。展望広場には金印の印面の石碑と、レプリカの金印が置かれていた。およそなんらかの大きな遺跡があったとは考えられない立地であり、なぜこの地から金印が出土したのか不思議に思われた。また、あれほど小さな金印が見逃されずに発見されたことは奇跡だと思う。(屋代)


   図2 金印出土地から玄界灘を眺める

■第2日 吉野ヶ里遺跡
弥生時代の代表的な環濠集落である佐賀県吉野ヶ里遺跡は、楼閣をはじめ多くの建物が復元されていて、弥生のクニの姿を彷彿とさせた。そのなかで、本物の遺構を見ることができる北墳丘墓は、印象深い思い出の一つである。北墳丘墓とは、吉野ヶ里の歴代の王やそれに近い身分の人々が埋葬されたと考えられる特別な墓である。
北墳丘墓がある展示室に入ると、すぐ目の前に本物の遺構が現れる。この展示からは、発掘当時の地層の様子や14基の甕棺の出土状況を知ることができると同時に、発掘現場のリアルさが感じられ、復元とは異なる凄みを感じた。
さらに、2023年からおこなわれている謎のエリアの発掘調査現場を見学することもでき、そこには、昨年話題となった有力者の墓とされる石棺墓があった。写真で見るよりも、実物は、長さも幅もかなり小さく、男性はもちろん現代の女性でも入れないような大きさだった。また、この石棺墓は小高い丘の1番上に位置し、石棺墓であることなども含めて、他とは区別された存在だったことが伺えた。(井上)


図3 この丘の上で吉野ヶ里遺跡の発掘調査中

吉野ヶ里には大環濠集落遺跡と人の優しさがあった。
吉野ヶ里遺跡公園では各エリアにボランティアの方がおり、解説をしてくれる。我々は特別に入場から終わりまでボランティアの山下さんが付いてくれた。山下さんは豊富な知識と類稀なるユーモアセンスで、飽きさせない解説をしてくださった。
遺跡の保護に関しては発掘場所をドームで囲んだ施設などがあり、貴重な遺跡を後世に残そうという強い意志を感じた。
最後にこれだけは伝えたいことがある。思いのほかレストランの料理が美味しく驚いた。吉野ヶ里遺跡は頭も心もお腹も満たしてくれる素晴らしい場所であり、ぜひ多くの人に訪れてほしいと思う。(埜口)


図4 ボランティア山下さんのご案内で吉野ヶ里遺跡を歩く


■第2日 九州国立博物館と太宰府天満宮
初めて訪れた九州国立博物館は、まずその立地から他の博物館とは違って面白い博物館だと感じた。太宰府天満宮から山の方へエスカレーターで進むと現れる近代的な建物はとても迫力があり、私が想像していた以上に大きかった。
今回私は『日本刀の美』という特集展示を中心に観覧した。この展示では平安から近代にかけて様々な時代の日本刀が展示されており、とても興味深い発見もあった。私は秋学期のゼミの研究で正倉院刀剣をテーマに発表をした。正倉院刀剣は大和伝の源流となる刀剣とされている。その大和伝の日本刀である千手院派と尻懸派の太刀が展示されており、正倉院刀剣で多く見られる特徴である直刃調の刃文がこの2口にも見られた。正倉院刀剣との繋がりをこの目で実際に見ることができて嬉しく思った。館内は広く、すべてを見て回ることは叶わなかったが、観覧することができて本当に良かったと思う。(堀越)


      図5 九州国立博物館で記念撮影


■第2日 太宰府天満宮
太宰府天満宮を参拝した後、皆で梅ヶ枝餅を食べた。梅ヶ枝餅を食べるのは、私は二回目だったが、前回は表面がカリカリしたものだったので、今回は全体的にしっとりした触感のもので、食べ比べができて良かった。
前回来たときは年末年始ということもあり、参拝者に学生はあまりいなかったが、今回は受験シーズンということで中高生が多い印象を受けた。他は韓国からの観光客が多く、以前来た時も多い印象を受けたので、福岡県が韓国から比較的近いことが感じられた。満開とはいかなかったが、飛梅が咲いているのを見られたことも良かった。天満宮本殿は修理中で、仮設の拝殿が前に建てられていて、その屋根の上に花や木が庭園のように植えられていたのは、以前見られなかったのでとても驚いた。(長谷部)


  図6 天満宮の参道で梅ヶ枝餅を食べる

■第3日 元寇防塁と福岡市博物館
ゼミ旅行最終日、雨が降る中、福岡市内に遺る元寇防塁を見学した。元寇防塁に辿り着く前の道からずっと松の木が何本も生えており、かつてここが海岸沿いであったことを示していた。
遺跡は一部分が保存されており、石がたくさん積まれ石垣の形を成していた。ただし、よく城などで見られるような断面を綺麗に揃えている石垣(石自体の形が整えられている)ではなく、周辺にあった大きな石をそのまま積んで固定しただけのような形であった。それでも、石の隙間がきっちり埋められていたため、戦いにも耐えられる頑丈な作りになっているなと感じた。
「元寇防塁」という言葉だけでは、どういったものが残っているのか想像することが上手くできなかったが、実際に訪れて見学したことと説明のパネルを見たことによって、多少ではあるが、戦いが起きた当時の状況と、防塁がどう使われていたのかを自分なりにイメージできたように思う。(吉澤)



         図7 雨のなか元寇防塁を見学

福岡市博物館は福岡市の考古資料や歴史史料が展示されていて、博多の伝統的な文化に関してや、近代の文化財も展示されていた。
展示室に入室して最初に目にするのが金印で、真っ黒な部屋に展示ケースがあり、スポットライトを浴びた金印を 360 度から見ることができる。金印の展示ケースの前には実物大の金印の模型が設置されていて触れるようにもなっている。今回初めて実際の金印を見 たのだが、私が思っていた大きさより小さくて驚いた。
福岡藩主黒田家ゆかりの刀剣は展示室の改修工事のため、見ることは叶わなかったが、「日本号」や「へし切長谷部」などが所蔵されているので、次に博多へきたときぜひ見たい。
博物館の入り口を入ったところに、アジア各地の物や服が置いてあり、実際に触ったり、 着ることができる体験学習室があったのも、とても楽しかった。(加藤)


図8 福岡市博物館で戦国時代の書状の折り方に挑戦


■旅のまとめ
私は九州を訪れたことが無かったので、すべてが初めての体験だった。この旅行では吉野ヶ里遺跡をはじめ、5つの施設(スポット)を見学したが、それぞれ充分な時間の中で見学をおこなうことが出来たので、どこも印象深い。加えて、塚田先生が要所で解説をして下さったので非常に勉強になり、充実した3日間となった。
とくに、皆で水炊きを囲んだ2日目の夜が印象深く残っている。授業とは異なる和やかな雰囲気だったので、みんな楽しく会話をしていたのではないだろうか。私はこの旅行を通して皆の仲が深まったのではないかと思う。最後に九州でお世話になった方に感謝したい。ありがとうございました。(吉田)

GO TOP