学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

国際文化コース

カルスタ夏休み通信②はじめての論文集

カルチュラルスタディーズコースってどんなことをを勉強するの? という質問にひとことでお答えするのは、じつはとてもむずかしいのです。?2.jpg

わざわざカタカナで書く必要場あるくらい「新しい」文化研究の方法。新しさのポイントは2つ、ひとつは「サブカルチャーもハイカルチャーも同じように重要な文化」ととらえて分析する点、もうひとつは「弱者の視点」をもつこと。

前者の説明はわりと簡単かもしれません。漫画もアニメも、ポップな音楽も、文学史に残る名作やクラシック音楽と同じように、いや、それ以上に私たちには意味のあるもの、と言うと、学生たちの目が輝きます音楽.jpg

むずかしいのは後者。世の中には「権威」というものが存在して、私たちに「価値」や「正しいものの見方」教えてくれます。受験生や高校生なら、この夏休みに読むべき「リーディング・リスト」を与えられていませんか? 自分が発掘するのではなく、あらかじめ「高校生が読んでおくべき本」というものがあるということ、美術館にいけば鑑賞するべきアートを教えてもらえるということ、新聞を開けば知っておくべき世界の出来事があるということ、ファッション雑誌を見れば旬の着こなしを教えてもらえるということ・・・。きりがないほど、私たちは他者からの情報によって自分自身の視点を構築しているのです。マスな情報を発信する力をもつ存在が「権威」、「権威」によってあらかじめ決められた意味を解きほぐし、その物語や表現を成り立たせている「仕組み」を分析しよう、というのがカルチュラルスタディーズ。

まだ説明が十分ではありませんね。でもこれは実践をとおして身につけていくしかない視点なのです。大学の4年間をかけて、ホンモノの洞察力と批判的思考力を培いましょう。

1年生の春学期は「新しい文化研究」の試みのスタート。カルチュラルスタディーズコースでは1年生春学期の授業で「テーマの見つけ方」「考察の深め方」「論考を論文にまとめるルール」の基本をゆっくりと勉強します。その成果を『はじめての論文集』としてまとめるのが恒例となりました。

この春学期に「ピカピカの大学1年生」がどのようなテーマに取り組んだのか、タイトルだけですが紹介します。本.jpg

小田扉作品から読み解く一般人                  
『涼宮ハルヒの憂鬱』から考える世界改変の力について      
『フィニアスとファーブ』~憎めない邪悪な博士とは?~      
作品と現代社会から“家族”をみる               
『チャーリーとチョコレート工場』における工場の演出について   
MJを生き返らせたマスメディア                 
おとぎ話による『魔法にかけられて』               
『スター・ウォーズ』から現代人へのメッセージ            
化粧と人の歴史                         
『図書館戦争』は実在するのか ―現代に存在する有害図書への規制―
ピーターラビットが日本に広く受け入れられた理由         
カオナシから見る現代の少女                   
『となりのトトロ』のトトロについて               
ディズニーアニメ映画『美女と野獣』:本と本屋・図書室の重要性、その役割とは
朗読劇『私の頭の中の消しゴム』が何度も上演されている理由    
『かものはしかも。』から見るゆるキャラの癒し効果         
ライダーが背負うもの                      
『アバター』からみるジェームズ・キャメロンの理想郷             
『ドラえもん』が現代社会に及ぼす影響              
『断章のグリム~灰かぶり~』の視点変え           
二つの作品に見える人間と悪魔の関係              
チャーリーとチョコレート工場における“しつけ”について    
『サザエさん』から見る家制度                  
『ハイスクール・ミュージカル』のヒットの秘密          
ジブリ映画『借りぐらしのアリエッティ』:小人と人間の関係性   
チョコレートが人に与える「パワー」             
『サマーウォーズ』における「夏」の持つ意味
『ちびまるこちゃん』の永沢君について
妖の存在と人間
 
文化を分析し、その考察を「論文」にする――カルチュラルスタディーズコースが目指すのが「論文を書く力」です。勉強を始めたばかりの1年生の論文集としては上々の出来。印刷をして綴じただけの冊子ですが、学生は互いの論文を読みあい、批評し、おおいに刺激されました。次のオープンキャンパスでは、完成したばかりの2011年度の『はじめての論文集』を読んでいただけるように準備しておきます。
 
カルチュラルスタディーズコースで何を勉強するのか、どのような力がつくのか、ひとことでは説明ができませんが、在学生がどのような取り組みをしているかご覧いただけば、何よりもよくコースの内容を理解していただけるのではないかと思います。
 
自分でテーマをみつけるセンス、それを分析する方法を使いこなす力、考察して得た見解を自分のことばで表現する語彙力と論理的説得力、一朝一夕に習得できるものではないからこそ、仲間といっしょに議論し、切磋琢磨します。
 
途方もないことのように思われるかもしれませんが、文化という大海原に自分のオリジナルな研究ベースをみつけるために、在校生の皆さんはこの夏休みを有効に使って、いろいろな文化に触れてくださいね。受験勉強に明け暮れている方たちも、ちょっとひととき、大好きなアニメや映画、音楽、文学の先にアカデミックな研究の可能性が広がっていることを想像してみてください。?.jpg
 
                                  伊藤淑子
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