学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

国際文化コース

「異文化の理解」学生発表から

新しい年を迎えました。新しい気持ちで、勉強に取り組んでいる学生の姿があります。new year.jpg

1月はそれぞれの授業が成果を確認する段階に入ります。

「異文化の理解」は「ディズニーとファンタジー」をテーマに、さまざまな角度から文化研究の可能性を探していました。

授業担当者の講義、ディスカッション、そしてゲスト講師の話、と展開し、今週から学生によるプレゼンテーションです。人数の多い授業なので、発表は希望者と推薦者になりますが、学生による発表の回は、発表する学生だけではなく、聞く側の学生にも学ぶことがたくさんあるのです。いっしょに勉強してきた仲間が見つけた論点、深めた考察、たどりついた結論、そして発表者の緊張まで、クラス全員が共有します。

今週の発表から2つ。

「いもむし」の水たばこ

『不思議の国のアリス』をディズニーはアニメ化しています。いもむしは物語の中間あたりに登場する重要なキャラクターです。そのいもむしが水たばこを吸っている、ということに注目した発表です。物語の一つのシーンから始まる興味深い考察の展開です。なぜ、いもむしは水たばこを吸っているのか、という疑問は、たばこの西洋における普及の歴史へと問題意識を深め、ポストコロニアルな視点へと導きます。イギリスで紳士のたしなみとなったのはパイプや葉巻、それでは水たばこは、と問い続けて、アラブや中国のたばこ文化にたどりつきます。オリエンタリズムを映し出す場面に、ディズニーがどのような視覚的効果を加えたのか、オリエンタルな表象は、イギリス中産階級の子どもであるアリスがアイデンティティを獲得するのに、どのようんな効果を発揮するのか、など、つぎつぎと問いが引き出されていきました。

『スター・ウォーズ』とディズニー

ディズニーが最近ルーカスフィルムを買収したことに反応した発表です。ジェットコースターが実は安全をもっとも大切にする乗り物であるように、ディズニーアニメはハッピーエンドを約束する安心して楽しめる娯楽です。その調和をもたらすカギになるのは「恋愛から始まる結婚」であると発表者は分析します。ところが、『スター・ウォーズ』はちがいます。恋愛はご法度であり、そのタブーをやぶったものは善(ジュダイ)から悪(シス)へと転落してしまいます。それを救うのは、もはや異性愛ではありえません。最終的に救済を果たすのは親子、とくに父子の愛である、と分析が進みます。異性愛主義の恋愛と結婚を和解と調和回復の要におくディズニーと、親子の関係をキーワードにするルーカスフィルムとは、この点において水と油なのだ、という結論が導き出されました。

 

学生が一生懸命に取り組み、誠実に発表した成果は、クラス全体への刺激となります。実り多い学年末になるように、ますますがんばりましょう。(伊藤淑子)

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