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国際文化コース

【人文学科国際文化コース】4年生による「異文化の理解(ディズニーとファンタジー)」の授業

2021年10月に、卒業論文執筆中の4年生横山さんが、1年生を中心とする科目「異文化の理解(ディズニーとファンタジー)」で、自分の研究テーマをもとに、授業をしてくれました。
研究中の題材をもとに、だれもが興味をもって聞くことができるように工夫を凝らした授業になりました。

横山さんから、ブログ記事として研究内容をまとめた概要と、授業を実施した感想が届きました。

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卒業論文の概要とWorkshopで授業をした感想
横山亜美

 

卒業論文『服飾表現にみるディズニープリンセスの変化』の概要

 

 ディズニー作品では、現在に至るまで、14人のプリンセスが誕生してきました。ディズニープリンセスは、時代が変わるにつれて、どのような変化を遂げてきたのでしょうか。私の卒業論文では、これまで主題として注目されることの少なかった、プリンセスの服飾表現にも焦点を当て、服飾表現とキャラクター像の関連を明らかにしながら、ディズニープリンセスの変化を解き明かしました。研究の結果、プリンセスの身にまとう服飾表現には、ディズニープリンセスのキャラクター像を、より強く印象づけたり、強調する役割を果たしていることが、明らかとなりました。主には、色が持つイメージによる効果ですが、時代が進み歴代のプリンセスが増えてくると、色に加えて、服飾の素材や、デザインでも、キャラクター像を印象づけたり、強調するようになりました。時代が変わるにつれての、ディズニープリンセスの変化がより鮮明に浮かび上がるように、彼女たちを公開年とキャラクター像の特徴から3つのグループに分類し、各グループから1人ずつ取り上げ、分析しました。

 はじめに取り上げたプリンセスは、1950年公開『シンデレラ』のシンデレラです。ガラスの靴で知られている彼女は、ディズニープリンセスの中でも、代表的な存在であると言えるでしょう。シンデレラは、幸せになりたいと願いながらも、自分から行動を起こすことはなく、誰かに幸せにしてもらうことを待つ、受動的な面を持ちます。しかし、彼女はただ受動的だったわけではありません。不遇の身でありながらも、夢を信じ続ける強さ、優しい心を忘れない強さを、決して手放さなかったのです。彼女の真の強さこそが、12時を過ぎてもガラスの靴を輝かせ、幸せへと導いたのです。そして、シンデレラは、青色のドレスが印象的なキャラクターです。夢をひたむきに信じ続ける真摯さや、常に優しく穏やかである人柄の誠実さを、青色のドレスが強く印象づけます。また、シンデレラの着用しているパステルブルーは、1940年代後半から若い女性に流行していた色であり、シンデレラが女性たちの憧れの対象であったことも、印象づけています。シンデレラの誠実さ、そして、王子様とともに幸せになっていくシンデレラへの女性たちの憧れこそが、ドレスを青色に染め上げたのです。

 次に取り上げたプリンセスは、1991年公開『美女と野獣』のベルです。『美女と野獣』より前の、ディズニープリンセスは王子様と一瞬で恋に落ちていましたが、『美女と野獣』では、恋に落ちるまでのプロセスがじっくりと描かれました。ベルは、自分の意思に従い、行動に移していく活動的な女性です。本を読むことで世界の広さを知り、結婚だけが幸せの形ではない、見た目に惑わされず心をみることが大切である、と知る彼女の聡明さは、町でたった一人青色を身に着けることで、強調されました。自分の思ったことを迷わず行動に移していくベルは、活動的をイメージさせる、鮮やかな黄色のドレスを身に着けるのに、ふさわしい女性です。彼女は、これからは女性も賢く、自分の心に従い行動し、守られる存在ではなく、大切なものを自分自身で守ることのできる強さを持って生きていくべきであると、公開当時の女性たちに、先導者のような存在として、生き方の発展を、新しい未来を予感させました。

 最後に取り上げたプリンセスは、2013年公開『アナと雪の女王』のエルサです。『アナと雪の女王』は、ディズニープリンセス作品として、初めてのダブルヒロインであり、もう女性に王子様は必要ないとのメッセージが込められているかのように、王子様との恋愛ではなく、姉妹愛が描かれ物語の幕を閉じる新しさを持ちます。エルサは魔法の力を持ちながらも、物語の外で生きる私たちが共感を抱きやすい、等身大の女性です。本当の自分を否定される恐怖から、自分を偽り生きていましたが、本当は自分らしく、ありのままの自分で生きたいと願う彼女の姿に、現代に生きる私たちは、共感を覚えずにはいられません。青緑色と、紫色を身にまとっていることからも、彼女の本当の自分を知られてしまうことへの憂うつさや不安が、痛いほどに伝わってきます。これからは、偽りの自分を捨てると決めたエルサは、真実の色である青色の光り輝くドレスを身にまといます。自分らしく生きていくという決断こそが、ドレスを美しく、力強く、光り輝かせたのです。

 時代が変わるにつれて、多くの変化を遂げてきたディズニープリンセスたちですが、彼女たちには共通点もあります。それは、それぞれの強さを持っていることです。不遇の身でも、優しさを、夢を信じ続けることを忘れない強さを持つシンデレラ。周囲の考えに流されず、自分の意思を大切に行動することのできる強さを持つベル。自分の生き方に悩みながらも、これからは自分らしく生きていくと覚悟を決める強さを持つエルサ。憧れの存在から、先導者へ、そして等身大の姿へと変化を遂げながらも、それぞれの強さを持ち、彼女たちはいつも、物語の世界で生き続けてきました。その強さこそが、彼女たちをディズニープリンセスとして輝かせる、解けることのない魔法をかけたのです。

 

 Workshopで授業をした感想

 

 先生から、授業をしてみませんかというお話をいただき、1年生の学生さんに向けて、授業をさせていただきました。時間をたっぷりといただき授業をする側に立たせていただいたことは、私にとって、貴重な経験となり、思い出に残っています。パワーポイントを使って、マイクを持ち、授業をすることは、たしかに緊張したけれど、とても楽しかったです。自分の研究結果を、興味を持って、1年生の学生さんが聞いてくれたことが嬉しかったです。授業中に積極的に質問を投げかけてくれたり、感想を述べてくれたり、授業後には丁寧な感想を書いて送っていただきました。どれもすごく嬉しかったし、いただいた言葉は宝物です。いただいた質問や、感想を通して、研究内容に対する新しい発見もたくさんありました。新しい視点からの意見は、研究を深めていくうえで大切だと感じました。1年生の学生さんにとっても、これから研究対象を決めていくうえで、私の授業が何かのきっかけや、少しでも役立てていたら、嬉しいなと思います。『服飾表現にみるディズニープリンセスの変化』というテーマで卒業論文を書き、授業もさせていただいたのですが、授業をしている時に、何度もこのテーマにして良かったなと思う瞬間がありました。誰かに向けて話すということは、自分の研究への思いを確かめるきっかけにもなります。貴重な時間と経験をいただけて、良かったです。



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横山さんはカルチュラルスタディーズコースの学生ですが、カルチュラルスタディーズコースのカリキュラムは、いっそうパワーアップした国際文化コースに引きつがれています。
横山さんの授業を受けた学生たちからは、たくさんの刺激を受けたという声があがり、授業後の質問やコメントも活発に出されました。


横山さんの授業を受けた学生のコメントをいくつか紹介します。

●ディズニープリンセスの服飾表現について、時代によって服装の特徴があることや、色にどんな意味が込められているのかなど、プリンセスの性格などと関連づけることで、そのプリンセスがどんな特徴を持っているのかより明確になっているのだと思いました。僕はプリンセスと言えばシンデレラという感覚があるのですが、着ているドレスの色がサムシングブルーで、それは女性の幸せを表しているという話を聞いて、やはりシンデレラは女性の誰もが憧れる存在であることがドレスの色からも伝わってくるのだと思い、印象的でした。結婚することが幸せという考え方から、社会進出を目指す生き方、形に囚われない生き方をするプリンセスへと時代とともに変化していることは、映画を見ている女性が共感できる女性像に変化していることなのだと分かりました。服飾という観点からプリンセスの変化を論じる眼点が素晴らしいなと思い、参考になりました。ありがとうございました。


●大学四年生のクオリティを目の当たりにして凄まじく感動と衝撃を覚えました。自分も三年後には同じ立場に立つので先輩のように堂々と発表できるように、また、興味を持った分野から面白いテーマを見つけ卒論を書ける様に頑張ります!お忙しい中わざわざ足を運んで素晴らしい発表を披露してくださり本当にありがとうございました。


●ディズニープリンセスを服飾の面から分析する、というのは面白いテーマだったと発表後に改めて思いました。ファッションとしての服飾ではなく、内面や属性、当時の背景を分析している所に斬新さを感じました。特に今回は色の話が多く、現在の価値観でもそのまま受け入れられる解釈ができるプリンセスたちのカラーに驚きました。服飾というのは絶え間ない自己表現の場であり、作品に関しては立ち位置を表現する重要なツールなのだな、と今回の発表を聞いて感じました。発表の仕方や構成など参考にできる点も多く、とても楽しい時間でした。お忙しい中ありがとうございました!





4年生にとっては大学での研究の集大成になるように、下級生にとっては良い手本になるように、これからも学年を超えた学問的な交流の機会をたくさん作っていきたいと思います。


                                      人文学科国際文化コース

♪この記事を引用する場合は、研究の着想も含めて、横山亜美「卒業論文『服飾表現にみるディズニープリンセスの変化』の概要」と明記してください。

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