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国際文化コース

【人文学科国際文化コース】 リレー国際体験記(4)星川啓慈先生①

国際文化コースの教員によるリレー国際体験記も今回で4回目です。
ぜひお楽しみください。

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カンザス大学留学体験記

今回の担当は、星川です。
「国際文化コースの教員によるリレー国際体験記」なので、バトンを受け取らないといけませんね。先回の伏木先生の文章には「シンガポールは安全な国だ、と事前に情報を入手していた私は、バックパッカーたちの使う宿を使うべく、宿の予約もせず、シンガポール深夜着の飛行機に乗り込んでいました」とありました。
 私も大学4年の時、バックパッカーとして、1か月間ヨーロッパを旅しました。宿は事前に決めることはせず、駅に降りて紹介所で探しましたし、次にどこに行くかは滞在したところを離れる前夜に決めました。文字通り、気分の赴くままに旅した、思い出深い貴重な1か月でした。騙されそうになったことも何度かありましたが、全部無事に切り抜けました。

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 この話は次回(次々回)に回して、大学4年の夏からアメリカの「カンザス大学」(University of Kansas)――カンザス州立大学(Kansas State University)ではありません――に10か月留学したときのことを少し書きましょう。懐かしいかな、もう40年以上たちます…。
 カンザス大学は全米でもキャンパスが美しいことで有名です。山一つ全体が大学のキャンパスで、スクールバスも走っています。写真を2枚載せておきます。


Aerial view of campus (1)

 留学で何をしたかといえば、ズバリ「勉強」です! 人生で一番勉強した時期かもしれません。交換留学生として母校から送り出してもらったプレッシャーもありましたが、とにかく勉強が面白かったです。
 その時は社会学と宗教学を学んでいましたが、ある社会学の授業はチュートリアルの授業でした。それは、毎週1冊の本を読んで(もちろん英語で書かれています!)指導教員と2人で議論する、というものでした。だいぶ力がつきましたね。何でもそうですが、苦労しないと身に付きません。
 帰国後、日本の母校に提出した卒業論文は “A Study of Religious Evolution in Christian Tradition”という英文80枚の大作です(皆さんはもっとテーマを絞り込んだ卒業論文を書きましょう!)。これはアメリカで書いたターム・ペーパーを集めて編集したものです。これには後日談があり、あまりにもエネルギーを必要とした辛い(ながらも実は楽しい)作業だったので、「生涯、二度と英文で論文は書くまい」と固い誤った決心をしてしまったのです。
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 勉強以外にも、ホストファミリーや友人にいろんなところに連れて行ってもらったり、アメリカの著名なフランス文学研究者の家でもホームステイさせてもらったりして、見聞を広めました。

Aerial view of campus (2)

 その一方で、こんな体験も…。
 ある日突然、大学のスクール・ポリスから「ちょっと来い」といわれて、キャンパスにある警察の詰め所に連れていかれました。
 その警察官が何を言っているのか、最初はまったく理解できませんでした。しかしどうやら、この私が「先週の日曜日、図書館の近くで、女子学生に暴力をふるったのではないか?」みたいなことを尋ねているんですね。思い当たることがなかったので、警察官が何を言っているのか理解できなかったのも当然です――文化研究との関連でいえば、文脈を知らないと文/文章は理解できません。その時は、ホストファミリーと教会に行っていたので、そのことを証言してもらいました。疑いが晴れても、詫びの一言もいわれませんでした。アメリカではそういうものなのか、その警察官が礼儀を知らないのかは、いまだに不明です。
 もし私のアリバイを証言してくれる人がいなくて、仮りにその女子学生が「暴力をふるったのは彼(私)だ」といったとしたら、面倒なことになったはずで、いまでも嫌な感じがします。その警察官は私が犯人と特徴が似ているので私を疑ったわけですから、その女子学生が私を犯人と取り違える可能性はあったのです。
 同じ寮に住んでいた、身長が190センチくらいある体格の立派な男子学生でも「犯罪にまきこまれる可能性があるので、夜は外出しない」というのを聞いたことがあります。私自身は夜でも寮から外出して怖い目にあったことはありません。夜、図書館から寮に帰ることもしばしばでしたし。しかし、スクール・ポリスの詰め所が大学のキャンパスにあって、いつもパトロールをしているという事実は、それだけキャンパスには危険が潜んでいることの証左なのでしょう。
 アメリカでは、年間数百件の銃の乱射事件もおきていますしね。中岡氏によると、「1日に100人以上が銃犯罪の犠牲者になっている」そうです(註)。
留学する場合には、なんといっても「安全第一」ですから、こういうこともお話ししておきます。

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 私は、アジアの大学は知りませんが、スコットランドのスターリング大学(ここもヨーロッパ屈指の美しいキャンパスで有名)で学んだこともありますし、ヨーロッパの大学もいくつか見ました。ケンブリッジ大学ではもぐりで授業を聞いたことがあります。そうした経験からいうと、欧米の大学では、「昼間からアルコールが飲める」ところがほとんどでした! 好意的に解釈すれば、昼間からビールを飲んで、アカデミックな議論を戦わせるような「大学文化」があるのかもしれませんね。考えすぎでしょうか(笑)。
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 最後に一言。今回のエッセイを読んで「星川先生は英語が達者なんだ」と思う人がいるかもしれません。残念ながら、そうではありません。実は、英語については「2度も留学したのに…」と劣等感をもちながら、これまでの長い人生を生きてきています。とりわけヒアリングは苦手で、自分が知っていることしか理解できません(それも、だいたいです)。昨年(2021年)の東京オリンピックの放送を聞いていても、日本語の「金」メダルと「銀」メダルの違いも聞き取れないことがしばしばだったので、耳が悪いのかもしれませんが…。
 伝えておきたいことは、次のことです。たとえ留学しても、自分から一生懸命勉強しないと英語は上達しません。普通の人(特別な外国語習得能力のない人)は、最初から「留学さえすれば英語が自然にできるようになる」とは、ゆめゆめ考えないほうが賢明だと思います。やはり、「ローマは一日にして成らず」です。

Kansas Jayhawk

(註)
「毎年、非常に多くのアメリカ人が銃犯罪に巻き込まれ、死亡している。2020年には、銃乱射事件(mass shooting)は610件と過去最高を記録(Gun Violene Archive調査)。銃犯罪による死者の数は1万9411人に達した。2021年に入っても銃犯罪と被害者の増加傾向は続いており、1月1日から8月18日までに銃で殺害された人数は1万2868名、負傷者は2万5795名に達する。実に、1日に100人以上が銃犯罪の犠牲者になっているのである。」
出典:中岡望「これだけ銃犯罪が増えてもなおアメリカが「銃禁止」を実現できない理由<前編>」
https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20210820/se1/00m/020/001000d#:~:text=2020%E5%B9%B4%E3%81%AB%E3%81%AF%E3%80%81%E9%8A%83,9411%E4%BA%BA%E3%81%AB%E9%81%94%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82 (2022年5月16日閲覧)

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次回のアップも楽しみにしてください。

◆人文学科 助手