学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

宗学コース

古都仏教文化研修(フィールドワーク)報告

 大正大学仏教学部恒例奈良・京都・鎌倉・江戸等の古都をめぐって仏教思想・仏教文化の源流を探る古都仏教文化研修が、今年の夏も学生・保護者45名の参加を得て、8月29日(月)~31日(水)の2泊3日で鎌倉・江戸(東京)で開催されました。
 
毎年、募集人員の上限(例年はバスの定員ですが、今年は宿泊先の定員でした)を集め、キャンセル待ちが出る程の人気の研修です。
というのも、大正大学の設立母体である天台宗・真言宗(豊山派・智山派)・浄土宗という幅広い人的ネットワークを駆使して行われるこの研修は、いわゆる通常の観光旅行では入れないような伽藍の案内をしていただき、あるいは、各寺院の僧侶(大正大学卒業生も数多い)による親身な解説をいただける貴重な研修だからです。
また、夜の講義も、大正大学の先生方の研究仲間が多く、こちらも各先生方から世界最高峰の研究成果をやさしい言葉でお話いただける定評のある企画です。
 
 
事前研修と事後研修を受講すれば、大学の単位としても認定されるということで、各参加者も一人一人が高い意識をもって研修に臨んでくれています。
 
 さて、今年の研修テーマは、
 
鎌倉・江戸の寺社を中心にわが国における仏教思想・仏教文化の源流を探る。
 

です。

 

今年度は以下のような行程でした。

 
【初日】
午後 北鎌倉・長谷
① 円覚寺
…鎌倉五山第二位、臨済宗大本山、神奈川県唯一の国宝建築物舎利殿を参拝、雲水さんたちの修行道場を案内いただきました。
01円覚寺舎利殿前.JPG
写真①国宝・円覚寺舎利殿の前でお坊様と共に記念写真です。
 
02円覚寺お茶屋さん.JPG

 

写真②円覚寺のお茶屋さんでひと休み。

 

② 長谷寺
…板東三十三所観音霊場第四番札所、須弥壇に上って像高三尺三寸〔9,18m〕の巨大な観音様の足下まで参拝しました。
夜:講義
 瀬谷貴之先生瀬谷貴之先生「鎌倉の仏像―霊験仏信仰との関わりから―」
…神奈川県立金沢文庫学芸員、運慶仏研究の大家である瀬谷先生の貴重なご講義を拝聴しました。
03瀬谷先生講義.JPG
写真③瀬谷先生の霊験仏信仰のご講義です。
 
【2日目】
午前 横須賀・鎌倉中央
① 浄楽寺
五体の運慶仏を蔵するご寺院、そのお姿に圧倒。近代郵便制度の祖・前島密のお墓もあります。
② 安養院
…板東三十三所観音霊場第三番札所、田代観音と呼ばれる十一面観音をお祀りしています、鎌倉最古の宝篋印塔も参拝しました。
③ 妙本寺
…日蓮宗霊蹟本山、比企谷に建つ日蓮宗最古の寺院、日蓮聖人の巨大な像に圧倒されました。
 
午後 材木座・藤沢
④ 光明寺
浄土宗大本山、浄土宗第三祖・良忠上人を開山とする巨大名刹、内藤家墓所も参拝、元大正大学教授宮林昭彦台下のご垂示を拝聴しました。
04光明寺.JPG
写真④大本山光明寺宮林台下を囲んでの記念写真です。
⑤ 遊行寺
…時宗総本山、一遍上人を宗祖とする時宗総本山、踊り念仏の実演も拝見しました。
夜:講義
林田康順「日本仏教の生成と展開―日本仏教外伝―」
…大正大学准教授、最近の研究成果に基づき鎌倉の寺院配置についてお話しました。
 
【3日目】
早朝 長谷
① 高徳院
…鎌倉大仏、言わずと知れた鎌倉の大仏様。神奈川県唯一の国宝仏です。佐藤ご住職様から懇切なご講話を拝聴しました。
05鎌倉大仏.JPG
 写真⑤早朝の大仏様の前で佐藤ご住職を中心に。
 
午前 江戸城南
② 本門寺
…日蓮宗大本山、日蓮聖人最期の地に建つ日蓮宗大本山です。
③ 九品仏浄真寺
…九体阿弥陀仏像、巨大な九体阿弥陀仏像と釈尊像を参拝、サギ草の開花にも遭遇できました。
06九品仏本堂.JPG
写真⑥九品仏の本堂で丈六のお釈迦様像を前に清水ご住職と記念写真です。
 
午後 芝・城北
④ 増上寺
浄土宗大本山、江戸城の裏鬼門に建つ巨大寺院、将軍様6人とお江や和宮公の霊廟も参拝いたしました。
⑤ 護国寺
真言宗豊山派大本山、綱吉公ご生母桂昌院の発願、奇跡的に戦災の被害を免れた江戸期の風情を多分に残した名刹です。
 
 
今回参拝した12の寺院は、鎌倉・江戸という武家中心の都市を考えるにあたり、あるいは、     あるいあ寺院は鎌倉時代・江戸時代という時代背景を語るにあたり、いずれも見逃せない寺院です。
 
鎌倉は、幕府崩壊後、政治の中心から長く離れていたこともあって、研究が遅れていましたが、近年の考古学・歴史研究によって、次々と新たな事実が発見されてきた、実にホットなスポットです。
当時は田舎であったろう江戸の地に徳川家康公が移封してから本格的な都市造成がなされた江戸は、わずか400年足らずの歴史にもかかわらず、わが国第一の都市、そして、世界有数の巨大都市へと変貌を遂げました。これら鎌倉や江戸の都市造営と寺院との関係は、まことに興味深いものがあります。
 
それらの一端を学ぶだけで、これまで観光として訪れていただけの寺院や仏像が、歴史の裏舞台を学ぶ興味津々のスポットへと大きく様変わりしていくのです。もちろん、そうした寺院は、人々の信仰の源泉として大切に守り伝えられてきたからこそ、今も多くの人々の参詣で賑わっているのです。
 
私自身は、すでに何度も訪れている寺院がほとんどですが、すべての寺院で訪れる度に新たな発見があり、ご本尊に手を合わせてご尊顔を拝すると、そのお顔に微笑みかけられ、声を掛けられているかのような優しさに包まれ、深い感銘を与えられます。
 
前述したように、各寺院で僧侶による丁寧な案内や接待をいただき、はじめて訪れる寺社の多かった学生や保護者の方々もいたく感動し、学生・保護者一同、大いに満喫した研修でした。
 
気が早い話ですが、早速、来年の行程を頭の中で練り始めています。奈良・京都・鎌倉・江戸と一巡しましたので、来年は再び奈良へまいります
前回の研修で叶わなかった日本仏教誕生の地、斑鳩や飛鳥にも足を伸ばしたいと考えています。
 
このブログをお読みになったみなさん、ぜひ来年はご一緒いたしましょう! 
合掌 
 
 
文責:仏教学部仏教学科准教授 林田康順
 
 
 
 07大学校門.JPG
 写真⑦解散は大正大学の校門前でにこやかに。
GO TOP