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【天台学研究室だより】天台声明公演

昨年末、12月19日(土)に行われました台友会(天台学研究室内)主催による第13回天台声明公演についてご報告いたします。
本年度は、天台の浄土教の祖である恵心僧都源信(942―1017)の1000年御遠忌にあたります。平安時代中期より阿弥陀仏や極楽浄土に対する信仰が段々と広まっていきますが、日本の浄土信仰に決定的な影響を与えた人物が、この恵心僧都です。比叡山の山深い横川に隠棲した恵心僧都は、厭離穢土・欣求浄土を説いた『往生要集』を著したことで有名ですが、その学徳は当時から広く知られ、『源氏物語』に登場する「横川の僧都」のモデルと考えられています。
   今年度の声明公演では恵心僧都を鑽仰して、天台宗の浄土信仰をよりどころとする「常行三昧」、「十二礼念仏回向法要」を執り行いました。

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第一部 常行三昧 次第
衆罪伽陀・三礼・七仏通戒偈・黄昏偈・無常偈・六爲・四奉請・甲念仏
阿弥陀経(大行道)・甲念仏・合殺・回向・後唄

第二部 十二礼念仏回向法要・舞楽 次第
奏楽(合歓塩(がっかえん))
始段唄・散華(顕教)・対揚(略対揚)・表白(講式節)
十二礼和讃譜・舞楽(陵王)・三句念仏・後唄
おつとめ(開経偈・般若心経・宝号・回向文)
奏楽(長慶子(ちょうげいし))


第一部 ~常行三昧~
 第一部の常行三昧は「例時作法」ともいい、『阿弥陀経』に説かれる極楽浄土を讃歎し、経典を唱えながら行道する法要です。現行の「常行三昧」は、慈覚大師円仁が入唐した際に、五台山において盛んに修されていた「五台山念仏」の法が伝わったものと言われています。阿弥陀如来の尊像を礼拝し、その名を褒め称え、浄土に生まれることを願い、浄土の功徳を観察し、自己の修めた功徳が他人にも及び、ともに成仏することを目指します。

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第二部 ~十二礼念仏回向法要~
 十二礼は、西方極楽浄土の阿弥陀如来の素晴らしい功徳を讃え、全身全霊より礼拝する行法です。この阿弥陀如来を礼拝することは、『往生要集』の「正修念仏」の章で恵心僧都が説いた正しい念仏のあり方(五念門)の最初に掲げられています。
 この法要の中では、恵心僧都が始めたとされる「講式」(仏菩薩の徳を講じた讃歎文)を取り入れた表白を講式節と呼ばれる節回しでお唱えします。この講式節は、語りかけるような地音が主となる独特の旋律で、その言葉と内容をはっきりと唱えるのが特徴です。
 また、法要の中で雅楽とのコラボレーションを行いました。舞楽「陵王」は、古代中国の南北朝時代、北斉の国の蘭陵王長恭(らんりょうおうちょうけい)という実在した人物の故事を題材に作られた舞楽です。陵王は、武勇才知に優れ、周囲が見とれるほど美しい容貌をしていたために部下が見とれてしまい、士気がなかなか上がりませんでした。そのため戦いにはいかめしい仮面を着けて臨んだところ、大勝利を収めたと伝えられています。現在では、舞楽曲の中でも最も演奏される機会の多い曲です。

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 この声明公演では、様々なゼミやクラブの学生たちにご協力をお願いしています。
 休憩時間には、お茶によるご接待を茶道部の学生にお願いし、また華道同好会には生け花を展示してもらい、会場を華やかにして頂きました。その他多くの方々のご協力により大盛況の中、公演を終えることができました。

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 声明公演は、恒例行事として毎年行ってまいります。今年(2016年)は、12月17日(土)礼拝堂にて行う予定です。今後も多くの皆様の御来場をお待ちしております。

天台学研究室 木村 周誠  
嘱託 布野 聡周 記
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