学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

公共政策学科

地域に行かない「地域実習」とは?

 こんにちは。タイトルを見て皆さんの頭の中は「???」という感じかもしれません。本学科は第3クォーター(秋学期)に7週間に及ぶ地域実習のプログラムを用意しています。学生はグループに分かれて、本学と連携している自治体に赴き、自治体業務を経験したり、地域内で調査活動などに取り組みます。学内での講義で培った知識を現場で実践し、学びを深め、使える知恵として定着させるプロセスです。今年、一期生として入学した学生の多くはこのプログラムを楽しみにしていました。しかし、初年度から新型コロナウィルスの影響で、現地・現場に行くことが困難な状況になってしまいました。私たち教員もどうしたものかと頭を抱えました。ただ、立ち止まってもいられません。どんな環境でも学生にとって最良の学びを提供しようと知恵を絞り、地域に行かなくてもできる地域実習プログラムを作り実施しました。内容は以下の通りです。

 最終的な成果物は「住民意識調査の分析・考察から導く自治体への提案」「自治体の課題解決のための広報媒体(パンフレット)」の2つ。どちらも地域を深く知り、当事者意識をもって、課題を抽出し、解決に向けて知恵を絞らなければ完成することはできません。このゴールに向かって全体プログラムを組むことで、実践的なスキルと地域への思いを養うことを目指しました。
 1週目は、実習に必須なスキルを身に着けてもらうための座学です。3週目に行う住民インタビューのための「面接法」と広報媒体制作に必要な「企画力・情報編集力」の講義を実施しました。2週目は各自治体の職員の皆さんを講師に迎え、地域の現状や課題についてお話をうかがいました(主にオンラインで行いました)。自治体の皆さんの危機感や地域に対する熱い思いに触れ、大いに刺激になったと多くの学生が報告してくれました。3週目は街歩きと住民インタビューです。はじめて(そして少しだけ)外に出ました。これまでの学びの蓄積を携え、自分なりの視点を持って、現地・現場を見て回る貴重な機会です。また、インタビュー(オンライン)では住民の生の声を聞き、地域課題にじかに触れる体験をしました。忙しい中、合間を縫ってパンフレットも完成させています。4、5、6週目は住民意識調査の分析・考察・提案のための時間です。先ほどのインタビューとは別にインターネットを使って実施した住民アンケートのデータから地域課題を見つけ、解決策を提案するというかなり高度な学びです。データを駆使し、あらゆる角度から分析し、最終的に説得力のある提案書にまとめなければなりません。まずは分析およびまとめ作業のツールとして欠かせないPC(パソコン)スキルの習得を行いました。ワード、エクセル、パワーポイントという基本ソフトに加え、最新の分析ツールであるタブローにも一部触れました。学生のPCスキルは格段に進歩し、今回の実習だけでなく、今後の学習や就職活動においても強力な武器になってくれることでしょう。その後、こうしたツールを活用し、各グループが素晴らしい提案書を作ってくれたことは言うまでもありません。最終週は実習のまとめです。最終日にこれまでご協力いただいた自治体の皆さんをお招きして報告会を実施し、パンフレットと提案書の内容をプレゼンテーションしました。積み上げてきた成果を堂々と発表する学生たちの姿は眩しく、わずか7週間でこれほど人は成長できるのかと感動すら覚えました。自治体の皆さんからも多くのお褒めの言葉をいただきました。学生たちも努力が報われ、感激したと思います。

 さて、7週間を振り返り思い出したのが「及ばざるは過ぎたるよりまされり」という徳川家康の言葉。物事は不足しているくらいのほうが過ぎるより良いという意味です。不自由であったり、制約条件があることで人はより工夫をし、良い成果が得られたり、成長できるのだと学生たちが証明してくれました。外出もままならない状況で、まだ一度も顔を合わせたことのない同級生とチームを組んで成果を出すという難しい課題に挑み、結果を出してくれました。彼らにとって素晴らしい経験になったと確信しています。私たち教員にとっても大きな学びであり、財産です。まだまだ厳しい環境は続きますが、学びを止めずに、学生ともども成長していきたいと決意を新たにする良い機会となりました。学生の皆さん、ありがとう!



 2020年11月13日(金)「フィールドワークⅠ実習報告会」での公共政策学科1年生による発表の様子

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