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哲学・宗教文化コース

【人文学科哲学・宗教文化コース】宗教文化研究B 身延山調査旅行④

前回に引き続き、一泊二日の身延山調査旅行の二日目後半の様子をお伝えいたします。

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 宿坊の方へのインタビューの後、久遠寺の諸堂を布教部の鈴木さんに案内していただきました。久遠寺は、本堂の他にも祖師堂や五重塔、御真骨堂などがありました。



 本堂は、朝勤の際にも訪れた場所です。美しい黄金の装飾と、正面に佇む日蓮上人の御尊像に思わず圧倒されました。残念ながら内部の撮影はできませんでしたが、非常に素晴らしいものでした。日蓮上人の御尊像は、本堂と祖師堂でそれぞれ異なる方によって造られているそうです。天井には八方睨みの墨龍が描かれ、伝説の通り宝珠を持たない5本爪の姿をしていました。

 御尊像の御指からは紅白の紐が伸び、外の回向柱まで繋がっています。これは、身延山が今年で開闢750年を迎えた記念として行われているもので、紐に触れることで日蓮上人と握手ができるようになっているそうです。

 拝殿には鶴などを模した透かし彫りが各所にあしらわれています。奥を覗くと、遠くに少しだけ御真骨堂が見えました。また、境内には古庭園がありました。蓬莱島や蓬莱山を模した立石、お釈迦様の長広舌を表した滝など、工夫が凝らされた美しい庭園となっています。


 他にも祖師堂や五重塔、1日目に登った菩提梯など、たくさんの見所がありました。日蓮宗の総本山たる威厳と、日蓮上人が晩年を過ごし大切にされた身延山の空気を肌で感じることができる、充実した時間を過ごすことができました。

 本堂東側の階段を下ると、宝物館入り口があります。宝物館では現在「身延山霊宝展」が開催中です。こちらには、日蓮宗の御本尊である文字曼荼羅や、手刺繍で描かれた掛け軸の『刺繍十六羅漢図』など、身延山に関わる様々な収蔵品が展示されていました。文政年間の作品「身延山全地絵図」の中には、今回私たちが宿泊した麓坊さんの名前も見つけることができました。
 また、現代アーティストの小松美羽さんの作品と、制作時の衣装が展示されていました。2021年に日蓮上人の生誕800年を祈念して奉納ライブイベントが行われた際、世界平和とコロナ終息を願って久遠寺に奉納されたものだそうです。

 そして、写経体験スペースでは一つ5分ほどで写経体験ができるようになっています。病期平癒や除災得幸、心願成就などの中から目的に合ったお経を選びます。筆ペンで下書きの上をなぞる形式となっており、筆を使うことに慣れていなくてもチャレンジしやすかったです。

帰りのバスに乗る直前には、御廟所(日蓮上人御墓・御草庵跡)を訪れる事ができました。

 「いずくにて死に候とも墓をば身延の沢にせさせ候べく候」という日蓮上人のご遺言に従って建てられた廟墓、そして1274(文永11)年のご入山以来、足かけ9年に渡って住まわれた御草庵跡など、身延山の中でもとりわけ神聖な雰囲気を感じます。まさに“聖地”という言葉がピッタリといった感じで、静かで広々としており神聖な空気が漂っているような場所でした。

 さらに、日蓮上人のご命日にあたる毎月の13日には、久遠寺祖師堂で法要が営まれ、廟墓では上人に報恩のまことをささげる御聖日の行事が行われます。我々が訪れたこの日は1113日。そのためか、熱心に御廟墓に祈りを捧げる信者さんをお見かけすることもできました。

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 今回は一泊二日の身延山調査旅行に行ってきました。予想外の過酷な山道、突然の濃霧などの予定に無かったイベントやハプニングは多少ありましたが、何事もなく無事に終えることができました。あらかじめ身延山やその周辺についての歴史や現代の変容についてなどの前知識を持って、博学な先生方と研究目的での調査観光は、これまでの個人的な観光とは全く違い、感慨深いものがありました。とても貴重な体験だったと感じています。
 引率してくださった寺田先生、大場先生、一緒に勉強してくださった皆さん、そして現地でお世話になった皆さま、本当にありがとうございました。

<文責:針田智羽・屋嘉比晋>

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