学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

宗教学専攻

「としまコミュニティ大学」ゼミ紹介②

「こどもに『いのち』をどう教えるか~市民が提案するいのちの授業~」②

 担当:弓山達也(マナビト支援者)  
     齋藤知明(マナビト支援補助者)


 実施日:6月11日(月)10時~12時
 教 室:大正大学3号館1階 鴨台プロジェクトセンター
 受講者:10人

 第2回ゼミのテーマは「『いのちの教育』の背景としての『こころの時代』を考える」でした。日本の教育史や事件史などを振り返って、どのような時代背景があって「いのちの教育」が誕生したのかを考えました。

 1980年代から現在まで「こころの時代」と呼ばれるものが続いています。80年代の「こころの時代」は宗教や占いが流行していました。しかし、90年代の「こころの時代」は、宗教や占いに対する関心が廃れる一方で、心理学が流行しました。この心理学ブームによって、『羊たちの沈黙』や『FBI 心理分析官』など、人の心の闇や動きに着目した作品などが人々に多く読まれました。

 また、高校生の大学進学にも影響を与えました。それまで、高校生が“自分自身を知りたい”という目的を持って大学受験をする際には、文学や哲学を専攻することを目指していたのに対して、90年代は心理学専攻への入学が増加しました。

 このような「こころの時代」の変遷について色々な要因が考えられます。90年代にはこれまでの日本では見られない事件が起こりました。「こころの時代」と関連して考えられる事件に、オウム真理教の地下鉄サリン事件や毒入りカレー事件、神戸連続児童殺傷事件などが挙げられます。このなかでも特に神戸連続児童殺傷事件が「いのちの教育」の誕生に結果として大きく関わった事件でした。日本史上これまでも凶悪事件というのはありましたが、「普通」の家庭の「普通」の中学生が、このような残虐な事件を起こしたということについて当時の社会は大きな衝撃を受けました。そして、二度とこのような凶悪事件を子どもに起こさせないために、「いのちの教育」を小中学校でしっかりと教えなければならない、という世論が生まれました。

 ここまでが弓山教授が説明した「いのちの教育」の誕生背景です。この説明をもとに、神戸連続児童殺傷事件時に大人が子どもから問われた疑問である「なぜ人を殺してはいけないのか」を題材に、受講者同士で議論しました。受講者からは「平和だから」「人間は生きるために生まれたから」「親から貰ったいのちだから」「人間は他の生き物と違うから」「他者の命を奪う権利はないから」「殺したら二度といのちは返ってこないから」などの意見が出ました。一方で、「戦争では人を殺している」「死刑制度はどのように説明できるか」などの反論も挙がり、いのちの大切さを伝えることの難しさや重要さについて一同は再確認しました。

(文責・齋藤知明)

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(この記事は、大正大学宗教学会のホームページの内容を掲載しております)

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