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宗教学専攻

日本宗教学会第71回学術大会でパネル発表しました

 9月7日(金)~9日(日)にかけて、三重県伊勢市の皇學館大学で日本宗教学会第71回学術大会が開催されました。大正大学宗教学会で運営している「震災と宗教」研究会のメンバーは、パネル発表として「東日本大震災における〈いわき市〉と宗教」を報告しました。本報告は、今年2月の中間報告会の後の調査結果などを踏まえた、研究会として2回目の報告となりました。当日は全く同時刻に、他の13部会でパネル発表が行われる厳しい状況の中でも、幸運にも30余名の研究者、教団関係者らに参加していただきました。

 第一発表者の星野(本学博士課程院生)は、「地域構造と宗教分布」と題して、はじめにフィールドであるいわき市の概要(いわき市の人口や産業構造、地域の特色など)と被災状況について説明しました。次にいわき市と周辺に展開する宗教の簡単な分布を紹介し、さらに原発事故による双葉郡などからの避難者たちがいわき市に集住することに触れながら、それによって生起した避難者と宗教に関わる問題を提示しました。

 第二発表者の齋藤さん(本学非常勤講師)は、「現地の宗教者の意識と支援活動」と題して、いわき市における現地の宗教者・宗教団体単体による支援活動を事例として、震災直後の支援活動、継続的な支援活動の内実を詳述しました。また、自分の支援活動を宗教者自身はどのように位置づけるのかという宗教者の内面について、さらにそのような長期間に渡る支援がなぜ可能だったのかという点について、それぞれ分析を加えました。

 第三発表者の小川さん(国際宗教研究所研究員)は、「伝統教団内の支援のネットワーク」と題して、現地の浄土宗若手僧侶の組合である青年会(浜浄青)の支援活動を事例として、青年会というネットワーク単位で行われる支援の形成過程とその内容、さらに浄土宗という伝統教団内で、このような地方青年会の活動がどのように位置づけられ、連携やサポートが図られるようになったか、という経緯を説明しました。

 第四報告者の寺田先生(本学准教授)は、「新宗教の震災対応」と題して、「阪神・淡路大震災時における支援とその総括」に関わる議論を踏まえながら、宗教社会学における著名な類型論(いえ=おやこ・なかま=官僚制連結モデル)を用いて、新宗教教団の支援活動を整理・分析しました。そしてその結果として、阪神・淡路大震災時とは違う結論が得られるのでは、と主張しました。

 以上の発表を受けて、阪神・淡路大震災時の宗教者の支援について詳しい、コメンテータの對馬路人先生(関西学院大学教授)によるコメントがありました。

 

 對馬先生によるコメントは次のとおりです。

 ①組織類型や地域との関わり方の違いが、支援の実際の違いを生むことに関して、さらなる分析が求められる。
 ②支援に成功した個人や教団が取り上げられたが、支援が思うように進まなかった個人や集団に対しての、阻害要因を明らかにすべきだ。
 ③支援受容者側のリアクションについて提示して、支援をどのように評価し、信者以外にも支援は及んだのかどうか。
 ④物的な損傷・喪失、社会関係の喪失などについての報告はあったが、被災者の心的ストレスに対するケアなどの支援はあったのか。
 ⑤宗教団体の支援はなぜ継続的に可能だったのか。
 ⑥宗教性が全面に出た支援が憚られた理由とはなんだったのか。

 また、フロアからは「支援者が疲弊しないような取り組みはあったのか」、「宗教者じゃなくともできた支援のようにも聞こえるが、宗教者ならではの支援とはなんだったのか」、「都市全体を見れば、宗教者の支援など微々たるもので、有効とは見なされなかったのではないか」という質問や、「宗教者による被災者収容のことをもっと説明して欲しかった」などのコメント・要望が多数寄せられました。

 このような質問、コメント、要望について、時間内ですべてに答えることはできませんでした。しかし、原発事故の影響により、被災者に長期的な支援が求められ、それに応じた宗教者による支援が、いわきでは今後も続くことが予想されます。これからもいわき市における動向に注視し、調査分析を行い、以上のような質問に今後とも答えていく必要を発表者一同感じました。

 最後になりましたが、発表のコメンテータをして下さった對馬先生、パネル発表を聞きに来て下さった皆様、発表の場を用意して下さった学会関係者や開催校である皇學館大学の皆様に、心より感謝申し上げます。

(文責:星野壮)

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多くの方が来場いたしました。

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フロアからの質問に答える寺田先生

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パネリスト、コメンテーター一同

 

(この記事は、大正大学宗教学会のホームページの内容を掲載しております)

大正大学宗教学会HP http://www.taisho-shukyogakkai.net/

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