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宗教学専攻

【震災と宗教】いわき市、震災から4年①

【震災と宗教】いわき市、震災から4年①

 

 大正大学宗教学会「震災と宗教」研究会は、いわき市を主なフィールドとして2011年から継続して研究を進めています。本年は、3月11日周辺に幾つかの班に分かれて、東日本大震災から4年が経つ、いわき市の追悼行事に見学・参加しました。今回から2回に分けて、被災地の様子を報告します。

 齋藤先生をリーダーとした班は、3月11日直前の週末の3月7日、8日に行われる追悼行事へと見学・参加しました。見学・参加した行事と概要は下記のとおりです。

 3月7日

・いわき市主催スタディツアー 薄磯・久之浜コース

 3月8日

・久之浜大久地区追悼花供養

・なこその希望2015 —4年目の祈り−

・3.11映画祭inいわき

 いわき市主催のスタディツアーは、小名浜の「いわき・ら・ら・ミュウ」の2階で開催されている「いわきの東日本大震災展(いわき市の被災状況)」の見学後、津波で大きな被害を受けた薄磯地区で語り部さんによる解説を受け、最後に久之浜地区と復興商店街・浜風商店街を見学しました。

 薄磯地区は、これまでも本研究会の調査で訪れていますが、語り部さんからお話を伺うのは初めてでした。語り部の大谷さんからは、震災当時、特に津波から逃げる様子を詳しくお話いただきました。薄磯地区には、津波が来るという考えが無く、多くの人が亡くなってしまったと話す大谷さんは、「これからは自分の命は自分で守る、という逃げる文化を薄磯地区に造っていきたい」とこれからについてもお話して下さいました。

 久之浜地区では、東北地方で一番最初に復興商店街として再開した、浜風商店街を見学しました。ここでは、以前の調査でお話を伺った、石川さんに偶然再会いたしました。現在の久之浜地区は、復興工事が進んでおり、来月には防災緑地の植樹祭が開催されるということもお伺いすることが出来ました。

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 スタディツアーにて立ち寄った塩屋崎灯台から見える、何も無くなった薄磯地区

 

 8日は、それぞれ3つの班に分かれて、各行事を見学させていただきました。ここでは、魚尾が見学させて頂いた、久之浜大久地区追悼花供養について書かせて頂きます。雨風強い中、9時半より久之浜の海岸にほど近い場所にて追悼花供養は開始されました。最初に以前お話をお伺いした、真言宗智山派福島第一教区智山青年会による法要が執り行われ、海に向けて造られた祭壇に地域の方々が花を手向けました。

 

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 雨の中、真言宗智山派の僧侶達によって供養が勤められました

 

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 追悼花供養の祭壇

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 法要の後に、献花が行われました。多くの方が献花し、手を合わせていました。

 

その後、地元や仙台、市原の団体によるエイサーや踊りの演舞や、歌の披露が行われました。震災発生の午後2時46分には、サイレンとともに黙祷が捧げられました。その後、地元久之浜のじゃんがら念仏踊りの団体による供養が行われました。雨風が強い中、じゃんがらの踊り手達は厳かに供養を行い、多くの人がその踊りと共に祈りを捧げていました。最後は、参加者全員による合唱で花供養は終了となりました。

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 強い風雨の中、じゃんがら念仏踊りによる供養が行われました。

 

 あいにくの天気でしたが、多くの人達が会場へと足を運んでおり、若い人達の姿が多かったように見えました。特に僧侶による読経の際に、雨に濡れながらも手を合わせる若い人達の姿が印象的でした。

 

 本研究会では、毎年3月11日周辺にいわき市を訪れ、被災地の様子を追悼行事などに参加することで感じてきました。当然ですが、4年が経過したからといって、被災者の悲しみが癒えることはありません。また、スタディツアーを添乗して下さった、いわき市の職員の方は、風評被害も無くなっておらず、いわきの現状を知って貰わなければならない、とおっしゃっていましたが、復興への道筋には、多くの障害があるように感じられました。そのような中で、宗教や宗教文化、信仰は被災者の方々にどのような助けになっているのか、今後も本研究会では調査などを通じて明らかにしていきたいと思います。

 次回は、3月11日のいわきの様子について報告いたします。

(文責・魚尾和瑛)

(大正大学宗教学会「震災と宗教」研究会の調査は、大正大学学内研究助成金ならびに科学研究費補助金による成果の一部である)

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