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宗教学専攻

『近現代日本の宗教変動―実証的宗教社会学の視座から―』(ハーベスト社)刊行のお知らせ


 このたび、本学の寺田喜朗教授ほか編著の『近現代日本の宗教変動―実証的宗教社会学の視座から―』がハーベスト社より刊行されました。宗教学・宗教社会学の領域に大きなインパクトを与えるであろう画期的な論文集です。
 

 本書は、近現代日本における宗教構造とその変化について実証的宗教社会学の立場から検討を加えたものです。ここで言う「宗教構造」とは、①「宗教運動・集団」、②「慣習的な宗教文化」、③「国家・公権力と宗教との関係性」の3層の様式とその連関を意味しています。それらが、幕末から明治・大正・昭和・平成までの約1世紀半における社会変動のプロセスにおいてどのように変容・変貌してきたのか――近現代日本の宗教変動――、それぞれの論者が事例研究を踏まえて実証的に明らかにしようとしています。

 企画から約1年半、ほぼ月1回のペースで検討会が開催され、徹底的な議論が積み重ねられました。文量的にも(原稿用紙換算で100枚超の論文も収録されています)内容的にも非常に読み応えがある重厚な論文ばかりで、力作揃いです。

 また、いずれの論考も周到に研究史が押さえられ、新たな調査あるいは一次資料の解読・検討が徹底された形で試みられているので、学生・院生にとって論文の書き方を学ぶ格好の手本となります。宗教学・宗教社会学を学んでいる方、これから学ぼうと考えられている方は、ぜひお手にとって頂くことをお薦めします。総410ページの大部の論文集ですが、3,800円(+税)と学生・院生にやさしい価格設定です。


『近現代日本の宗教変動』:表紙(帯付き)[1]

 目次は以下の通りです。

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序章 日本における宗教構造の変容と宗教社会学 寺田喜朗 ・ 小島伸之

第Ⅰ部 宗教運動論の展開

1章 教団類型論と宗教運動論の架橋 寺田喜朗 ・ 塚田穂高

    ―日本の新宗教の事例から―

2章 佛立講系在家仏教運動の類型間移行 小島伸之

    ―伝統テクスト型教団の展開過程―

3章 「近代教団」としての金光教の形成 藤井麻央

    ―明治期における宗教運動と宗教行政―

4章 霊波之光教会におけるカリスマの成立と継承 塚田穂高

    ―霊能の指導者集中型教団の発達課題―

研究動向1 世俗化論・合理的選択理論 大場あや

 

第Ⅱ部 地域社会と宗教

5章 近隣ゲマインシャフトと葬送習俗 寺田喜朗

    ―根白石村における契約講のモノグラフ―

6章 政教分離訴訟の宗教社会学 塚田穂高

    ―北海道砂川市有地上神社問題のフィールドから―

7章 人口減少時代の教団生存戦略 川又俊則

    ―三重県の伝統仏教とキリスト教の事例―

研究動向2 戦没者慰霊研究 小林惇道

 

第Ⅲ部 国家と宗教

8章 穂積陳重の先祖祭祀論 問芝志保

    ―「国体イデオロギー」言説の知識社会学―

9章 昭和戦前期日本の「宗教弾圧」再考 小島伸之

    ―特別高等警察の目的と論理―

研究動向3 国家神道研究 原田雄斗

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 ここでは、筆者の関心に引きつけながら、いくつかの論文を簡単に紹介したいと思います。

 

▼序章「日本における宗教構造の変容と宗教社会学」

 序章では、実証的宗教社会学の歴史において、これまでどのような対象が、どのような問題意識のもと、どのような手法で論じられてきたのかが概観され、また、今日の宗教研究が直面している課題・問題点が論じられています。さらに、近現代日本の宗教構造を考えるための前提として、近世・近代・現代における<国家・公権力と宗教との関係性><慣習的な宗教文化><宗教運動・集団の存在形態>が手際よく解説されており、この章を読めば、日本宗教の近現代史が効率的に把握でき、また日本の宗教文化の特殊性とその形成過程がよく理解できると思います。序章だけでも3,800円の価値があるのでは?!と感じます。

 

▼第Ⅱ部「地域社会と宗教」
5章「近隣ゲマインシャフトと葬送習俗―根白石村における契約講のモノグラフ―」

 本章は、地域の葬送習俗を支えてきた契約講という伝統的な近隣組織の変容とその要因について、農村社会学・民俗学(鈴木栄太郎・有賀喜左衛門・竹内利美等)等の成果・課題を受け継ぎながらも、宗教社会学の立場から実証的な検討を加えています。筆者の関心と非常に近いテーマの論文だったため、とりわけ興味深く読んだのですが、地域調査とは、ここまで徹底してやらねばならないものか、ということを強く印象づけられました。


6章「政教分離訴訟の宗教社会学―北海道砂川市有地上神社問題のフィールドから―」

 政教分離訴訟という現代的な問題を扱った内容ですが、社会変動により地域社会の伝統的な宗教―集落神社―がどのように変容し、何が問題となったのか、という宗教社会学のオーソドックスな関心のもと、興味深い議論が展開されています。この論文も周到な現地調査と公有地管理に関わる諸機関――国有地管理担当部署(財務省)、47都道府県の公有地管理担当部署、国内全市町村の公有地管理担当部署――を対象とした有効回答808(配布数1,767)の質問紙調査に裏付けられています。

7章「人口減少時代の教団生存戦略―三重県の伝統仏教とキリスト教の事例―」

 本章は、過疎化・高齢化社会における伝統仏教とキリスト教の現状に対して、マクロとミクロ、双方の視点から迫ったものです。真言宗智山派・浄土真宗本願寺派・曹洞宗・日蓮宗・日本基督教団による宗勢・教勢調査の結果を総合して伝統仏教・キリスト教が直面する課題を描き出すと共に、三重県の宗教者への事例研究から生存戦略が検討されています。
 第6章と第7章は、平成以降の人口減少や高齢化といったアップ・トゥ・デイトな社会問題が背景となっており、本書でも注目の集まる論考ではないかと思います。


 

▼第Ⅲ部「国家と宗教」
9章「昭和戦前期日本の「宗教弾圧」再考―特別高等警察の目的と論理―」

 本章は、特高警察が行った宗教取り締まりの論理<特高警察とはどのような組織で、何を守ろうとしていたのか>を分析したものであり、本書の中でも特に勉強になった論文の一つです。国家と宗教の関係を考える上で非常に参考になりますが、それ以上に戦前の天皇制国家ないし日本ファシズム・超国家主義の実態を考える上で興味深い論考だと思います。

 

 この他にも、第1章(寺田・塚田)の新たな教団類型論は、膨大な新宗教研究の成果が網羅的に整理されていて、また議論の内容が非常にクリアでとても参考になります。続く第2章(小島伸之)・第3章(藤井麻央)・第4章(塚田穂高)は、第1章を踏まえた形となっており、新宗教運動の展開のダイナミズムが実証的かつ鋭く描かれています。また、第8章(問芝志保)では、家族国家論的な国体イデオロギー普及の最大のキーマンと目されてきた穂積陳重の立場と言動の背景に接近しています。この研究も膨大な先行研究と関連文献が周到に読み押さえられ、明快な論旨が貫かれていて非常に勉強になります。


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検討会の様子(大正大学宗教学研究室にて)


 最後に、個人的にちょっとアピールさせて頂きたいのが、小林・原田・大場が書いた「研究動向」です。筆者(大場)が担当させていただいた「世俗化論・合理的選択理論」は、世俗化論・合理的選択理論の成果・有効性・限界・課題について先行研究を収集し、整理を試みました。約7か月間、編者の先生方から徹底した指導を頂きながら執筆に取り組みましたが、自分としては全力を出し切り、現状でできる限りの作品に仕上げたつもりです。

 

 今回私は、先生方・先輩方の研究に対する、決して妥協を許さない姿勢を見て、強い感銘を受けました。学界を牽引する先生方・先輩方が渾身の力を振り絞って制作した直球の論文集です。本書全体、または各論について、ご指摘・ご感想などお寄せいただけましたら幸甚です。
 最後になりますが、執筆に際して懇切な指導を賜った先生方・先輩方、私のような実績がない若手にも執筆機会を提供して下さったハーベスト社の小林達也社長に深く感謝いたします。

 なお、本書公刊に際し、平成28年度大正大学学術出版助成金を受けました。記して感謝いたします。


(文責・大場あや)