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宗教学専攻

【宗教学専攻】「宗教と社会」学会第26回学術大会に参加しました


 2018年69日及び10日に、帝京科学大学において「宗教と社会」学会第26回学術大会が開催され、本学研究室からは、以下の大学院生2名が発表しました。

・髙田さん
「宿坊運営における女性の役割―武州御岳山の婚姻の事例を中心に―」

・髙橋さん
「「勤王僧」の顕彰と地域社会―福井県三国地域を中心に―」


 髙田さんは、山岳霊場の武州御岳山における御師(参詣者の祈禱・宿泊などの世話をする)の女性家族の役割について、主に御師の妻に対する聞き取り調査から得られたデータに基づいて分析を行いました。本発表は、現在、他の山岳霊場においてあまり活動が見られない御師が、なぜ御岳山においては存続しているのかという点からも注目されます。
 分析は、御師家の妻が宿坊運営においてどのような仕事をしているのか、冠婚葬祭などの山内の諸儀礼がどのような社会関係のもと行われているのか、御師家の妻がどのような経緯で嫁いでくるのか、という観点から行われました。
 その結果、講員(信仰者)以外の観光客などの宿泊客受け入れに伴って、業務内容の変化(妻は宿坊運営業務の実質的責任者となる)、山内の女性が属する組織の変化(社会関係は弱化するが、宿坊運営では相互扶助の強いつながりがある)、婚姻儀礼の簡略化や通婚圏の変化が見られました。
 質疑応答では、他の山岳霊場においても御師の妻の役割に注目した先行研究は少ないこと、また、様々な領域の女性研究にも接続できる内容であることなどが指摘されました。



発表の様子


 髙橋さんは、福井県三国地域(現・福井県坂井市三国町)で起こった勤王僧・瀧谷寺道雅の顕彰運動を事例として、地域主体による贈位請願の意味について検討しました。本発表は、近代における勤王僧の「偶像化」の展開過程に関する実証的な研究として、意義深いものと言えます。また、国による贈位顕彰の研究史を主軸に、地域社会の近代化やツーリズムといった研究視角を参照しながら考察を加える点が特徴的です。
 結論としては、本事例にみる勤王僧の顕彰は、天皇制イデオロギー的な発想・思想背景に基づく運動にとどまらず、三国地域が抱える諸問題を背景に実践されたものであり、観光による地域振興という目的に人物顕彰が繋がったという点を持つことが指摘されました。
 フロアからは、観光スポットとしての瀧谷寺に関するもの、地域振興と贈位請願運動の関係等さまざまな質問が寄せられ、活発な議論が展開されました。


 以上、「宗教と社会」学会第26回学術大会の報告となります。
 本学の研究室では、学会への積極的な参加・聴講が推奨されており、今回も年次を問わず多数の院生が参加しました。「宗教と社会」学会は様々な分野からの発表が行われるため、見聞を広める貴重な機会です。今回の経験を活かし、自身の研究に励んでいきたいと思います。

(文責:小泉壽・塚越明香)

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