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宗教学専攻

【宗教学専攻】浜通りフィールドワーク ③ インタビュー編


 MD
宗教思想史特論(2019年度)では、震災「後」文化をキーワードに文献調査および福島県の浜通りでのフィールドワークを実施しました(文献編訪問編)。このフィールドワークの目的の一つが、『新復興論』(ゲンロン 2018)で第18回大佛次郎論壇賞を受賞した小松理虔さんに、本書のキーワードである「復興」や「地方/ローカル」そして「当事者」などについて改めてお話をうかがうことでした。そこで第3回目となる本報告では、これまでの学びの総括として、小松さんへのインタビューから震災後文化の可能性を報告します。

 小松理虔さんは、いわき市小名浜に生まれ大学卒業後、地元テレビ局記者などを経て、震災時にはかまぼこメーカーに勤務されていました。現在ローカルアクティビストとして、福島県いわき市小名浜で企画展示等を行うオルタナティブスペース「UDOK.」の主催や「いわき海洋調べ隊『うみラボ』」など地域と外をつなぐ活動をされてきました。
 今回、私たちは小松さんとと共に活動する江尻浩二郎さんのご紹介で小松さんを訪問することとなりました。


(江尻浩二郎氏撮影)


 小松さんにとってローカルアクティビズムとは、単に地方というだけでなく「現場」での活動を指すそうです。小松さんの場合、福島という現場=地元で当事者たちと活動を続けていますが、常に自身を内部の当事者でもなく外部の専門家でもない立場におくそうです。それは、例えばエビデンスを至上とする専門家の言説が、その正しさゆえに震災後放射線や防潮堤など様々な対立する議論を引き起こしてしまったこと、震災からの復興を「被災者」という狭い当事者問題にしてしまうことでその他の人々との間に距離が作られてしまったことへの反省もあるそうです。
 そこで現在小松さんは、福島の魚を釣り食べることや、アートプロジェクトを行っています。そこに参加する/食べるという行為を通じて当事者性を拡げ、様々な立場の人が顔を合わせて話せる場を設け、その楽しさや「おいしい」という気持ちを広げていこうとされています。

 小松さんの活動は、そうした「内」と「外」のつながりだけでなく、「過去」と「未来」をつなぐものでもあります。それは、いわきが過去の津波だけでなく戊辰戦争、太平洋戦争からの復興を目指してきた土地であるにもかかわらず、過去に復興を目指した人たちがどんな未来を思い描いていたのかという「死者の声」に、今を生きる自分たちが耳を傾けてこなかったという反省によるものだそうです。


 こうした小松さんのお話に一貫するのは、現場にいながらも常に俯瞰した立場で専門家の知識を「スポンジのよう」に学んできたこと、そしてそれを、机上の空論にせずローカルな現場で実践してきたことです。そうした学びと実践の往還の中で、『新復興論』にまとめられた新たな現場の思想が生み出されたことが伝わってきました。小松さんとお会いすることで、そして、私たちのように福島の外に住む者でも「食」「アート」そして「歴史」を通して、福島の文化を体験し、それを地元の人と共有し発信していくことで自らも当事者性を帯びながら、震災後の新たな文化を再創造することが可能となる、あるいは、おのずと巻き込まれていることに気づかされました。


 最後になりますが、「UDOK.」の小松理虔さん、江尻浩二郎さん、「結のはじまり」の古谷かおりさん、福島田んぼアートプロジェクトの市川英樹さんをはじめ、フィールドワークでお会いした皆様には貴重なお時間をいただき誠にありがとうございました。


                                     (文責:河田純一)