学部・大学院FACULTY TAISHO
宗教学専攻
【宗教学専攻】日本宗教学会第85回学術大会に参加しました

会場の東北大学
2026年9月11日(金)~13日(日)、東北大学川内キャンパス(仙台市青葉区)にて、日本宗教学会第85回学術大会が開催され、
本研究室からは教員および院生が参加しました。
9月12日(発表時間・部会順)
◆松野智章先生(東洋大学)「魂に対する態度』再考―AIと他我問題―」

9月12日(土)、第2部会において、東洋大学の松野智章先生が「『魂に対する態度』再考―AIと他我問題―」と題して発表を行いました。
発表では、AIに魂があるかどうかを直接論じるのではなく、AIの問題を契機として、ウィトゲンシュタインの「魂に対する態度」を批判的に検討しました。「魂に対する態度」という捉え方の哲学的な有益さを認めつつ、その枠組みで思考を止めることに警鐘が示されました。
AIの心をめぐる問題を他我問題の再発と捉え、生命観や、人が魂を感じ取る生得的な働きを改めて問う必要性が論じられました。
◆岡田正彦先生(天理大学)「日本における暦と近世・近代宗教史」

岡田正彦先生は、貞享の改暦以来、西洋天文学の新たな知見にもとづいて改暦をくり返した近世後期の知的布置のもとで、仏典中の天文学的知見を背景にした「須弥界」の暦法(梵歴/仏暦)を提唱し、独自の改暦と暦の頒布を行なった梵暦学の隆盛とその近世・近代仏教思想史上の意義についてご発表されました。これまで、本格的に研究されることのなかった焚暦法の提唱者である普門円通や門弟たちの宗派内での活動に焦点をあてながら、梵暦学の隆盛の意義を再考されました。
◆小林惇道先生(本学専任講師)「日清戦争期における天台宗と鎮護国家」

小林先生は、日清戦争期に天台宗が行った「戦時事業(祈願・献金・御守札・従軍布教・捕虜撫恤・戦没者追弔)」を展開したことについて紹介しました。また、その事業の根拠とされたのは天台宗が長く掲げてきた「鎮護国家」について、その言葉のもつ意味を複数の視点から検討しました。
◆髙瀨顕功先生(本学准教授)葬送儀礼の変容とその背景-葬儀社へのインタビュー調査より-

髙瀨先生は、コロナ禍を契機とした葬送儀礼の変容を、葬儀社へのインタビューを元に、供給側(葬儀業者・宗教者の都合)
と需要側(遺族側のニーズ)という2つの側面から検討しました。一般弔間(先に焼香して帰る)、会食の減少・代替、家族葬の
増加などについて、その変容の要因を考察しました。
◆江原知華さん(本学院生)「笠間稲荷神社における地域振興と展覧会事業」

博士後期課程の江原さんは、茨城県笠間市にある笠間稲荷神社が明治・大正期に展開した農業振興施策に着目し、それらの事業が、明治中期の農業奨励政策に対応するものであったと同時に、一種の神社経営事業として地域振興の
窓口的な役割を果たしていたと指摘しました。
◆芳賀徳仁さん(本学院生)「富士大石寺顕正会の「日本」をめぐる言説」
博士後期課程の芳賀さんは、富士大石寺顕正会の機関誌「顕正新聞』を資料として、「あるべき日本(日蓮仏教によって
開顕された日本国内)」と「現実の日本(克服されるべき日本)」という枠組みに視座を置いて分析しました。特に「歴史観」
をめぐる言説に注目し、その変遷とその後の「自虐史観」の発生について考察しました。
9月13日(発表時間・部会順)
◆村上興匡先生(本学教授)「宗教法人法制における団体の宗教性」
村上興匡先生は「宗教法人法制における団体の宗教性」と題して発表を行いました。近年問題となっている宗教法人格の
不正利用を背景に、宗教団体法、宗教法人令、宗教法人法へと至る制度の変遷をたどり、法律が宗教団体の「宗教性」を
どのように捉えてきたのかを検討しました。宗教法人法における宗教性の規定は、日本の宗教集団の多様性に対応するための
最低限のものであることを確認しました。宗教性の審査を厳格化では不正利用を防止できないとの見解が示され、
宗教と法制度の関係を考える発表となりました。
◆小前ひろみさん(本学院生)「明治期の反キリスト教運動-両全教社を中心に-」

博士後期過程の小前さんは、明治期の反キリスト教運動の形成過程について発表しました。先行研究の中で言及されていない、
浄土真宗本願寺派系の「仏教結社」である両全教社を中心に、その活動を検討しました。真宗地帯で起こった一致教会への迫害は、
寺院や門徒の集団的行動ではあるものの、結社という組織活動によるものではなく、しかしキリスト教伝道の阻害要因であったことは事実であると指摘しました。
◆大場あや先生(上越教育大)「在カナダ華人教会の成長と分化-出身地・世代・宗教的背景-」

大場先生は、カナダにおける華僑華人人口の変動についての調査を発表し、トロントでの分化・分裂を分析しました。
先行研究以降さらに移民の波が続いたことについて、社会階層や教育水準以外の対立軸や結節点を探りました。
教会分化の要因とされる「文化的障壁」は宗教的背景の違いによって生まれ、移民構成の変化に応じて宗教コミュニティも
変容すると考察しました。
パネル発表(部会順)
◆弓山達也先生(東京科学大)コメンテーター「信仰の内と外の対話-当事者性と公共性のあいだ-」

第9部会・午後パネルでは、「信仰の内と外の対話―当事者性と公共性のあいだ―」をテーマに、宗教教団や諸宗教横断組織に属する
研究者による発表が行われました。 自身の信仰と学術的な視点を行き来しながら、当事者の経験をいかに社会へ開き、外部からの批判や規範を信仰とどう結びつけるかが論じられました。コメンテーターの弓山達也先生は各発表者に意義深いコメントを寄せられ、
発表者もそれぞれの立場から応答し、宗教と社会の関係をめぐる対話が交わされました。和やかな雰囲気のなかにも、
信仰の内と外をつなぐ問いが心に残るパネルでした。
◆寺田喜朗先生(本学教授)司会「谷口雅春の実相哲学の内包と外延」/発表者「谷口雅春の神癒言説とその継承-徳久克己を中心に-」

寺田喜朗先生は、生長の家の教祖・谷口雅春の先行研究をレビューすると共に、生命主義的救済観や心理療法的救いの思想などの
鍵概念の含意と射程をご発表されました。さらに、谷口雅春の説いた救済思想が、教団内の他の布教者によってどのように解釈・継承
されていたのか、徳久克己という中核的な指導者(本部講師・元理事長)を事例にしながら、その力点ないし重点についてご
検討されました。
今大会のプログラムは、以下のURLより閲覧できます。関心のある方は、ぜひご覧下さい。
https://jpars.org/conf-past.html
(文責:芳賀徳仁・岩本教裕・屋嘉比晋・町山大城・針田智羽)
