学部・大学院

「学び」と「実践」を通じた人材育成

仏教学コース

特別企画「学びの探索 教員版」第16回 種村隆元先生

公式Facebookページ開設を記念して、学科教員の研究の紹介や教員になった経緯などを紹介する企画です。
大学HPの教員紹介よりも一歩踏み込んだ内容となっております。
高校までには居なかった、専門分野において突出した知識や経験を持つ仏教学科の先生たちを余すことなく紹介します。

第16回は仏教学コースの種村隆元先生です。
📜📜 インド学仏教学の世界へ 📜📜

📕進路の模索と仏教への道📕
私は父親が僧侶でしたので、「仏教」は常に身近にありました。しかし、若い頃には仏教、特に仏教の行事は、あまり興味を持っていませんでした。仏教は「抹香臭い」と感じていたことを覚えています。
高校に進学して、進路を決めなくてはいけない時期になってくると、理系の進学や、文系でも文学部ではない学部への進学も考えました(今から考えると「逃避」だと思います)。しかしながら、やはり理系はもともと得意ではなく、某大手予備校の模擬試験で壊滅的な点数を取り、また高校3年の担任の先生が「君は文系で文学部のようなところがあっていると思うよ」と言われ(=ダメ出しをされて)、文系進学を決めることにしました。
入学した大学は、1、2年時は教養課程で、3年進学時に進学先の学部学科が決まります。入学したときには、おぼろげに「印度哲学でも勉強しようか」と考えていました(やはり仏教が身近にあったからでしょうか)。入学時のオリエンテーションで、進学希望先を「印度哲学」と書いたところ、オリエンテーションを手伝っていた先輩学生が「おい、彼印哲志望だって!」と、希少動物を見つけたかのように興奮していました。「印度哲学(=インド思想と仏教学)」コースは、変人が進学するところと思われていたようです。
「抹香臭い」仏教のイメージが変わったのは、大学に進学して手に取るようになった仏教学関係の書籍を読み始めたことからです。釈尊の教えや、中観や唯識などの大乗仏教の思想に触れ、「仏教って意外に面白いじゃないか」と思い始めました。

📕大学院での決意―インド密教への道―📕
大学院修士課程に進学してから、色々迷ったすえにインドにおける密教の研究をしようと思いました。サンスクリット語の文献を読んでインド仏教を研究することは決めていたのですが、どの分野に絞り込むかはまだ決めかねていました。インドの密教には興味があったもの、当時はほとんど研究も進んでおらず、どこから手を付けてよいのか悩んでいました。私の指導教授だった江島恵教先生から、「種村君、もしかしたら密教は、いわゆるIndology(インド学)というものをできる最後のフィールドかもしれないよ」という言葉をいただき、広くインドのことを勉強したい、という欲求もあって、インド密教の研究に本腰を入れることにしました。
インド密教に研究分野を決めたものの、どの文献から手を付けるべきか依然として不明確でした。ただ、これも江島先生からの影響で「写本を使用する」ということだけは決めていました。その時、写本研究をしている先輩から「東大図書館に『所作集註』という密教文献の古い写本があるよ」という情報を得て、「それでは、その文献を読んでみよう」と思い立ちました。『所作集註』は、儀礼マニュアルで、いわゆる思想や教理を扱う文献ではないのですが、結果として、仏教というものが思想・教理だけではなく、儀礼などの実践を含む総体として理解する必要があると気づきました。それとともに、仏教に対する「抹香臭い」というイメージも徐々に変わってきました。

📕オックスフォードでの学びと交流📕
江島先生からは、「インド密教を研究するならヒンドゥー教のタントラも読んでみなさい。おそらくびっくりするほど似ていると思うよ」とアドバイスを受けました。そこで、ヒンドゥー教のタントラを専門とする海外の教授のもとで勉強したいという思いが強まりました。ちょうどその頃、オックスフォード大学のアレクシス・サンダーソン教授の噂を耳にし、教授の論文を読み、その中身の濃密さと該博な知識に感銘を受け、留学を心に決めました。
サンダーソン教授は厳格な先生で、学生に常に高いレベルを求めるとともに、同年代の学生同士で勉強することの重要性を説いていました。ですので、留学中は他の研究員・学生とともに様々な文献を一緒に読みました。このことが現在の自分に非常に役立っています。学生の皆さんには、ぜひ仲間の学生さん同士で行う勉強会を行ってください。きっと得るものが多いはずです。

📕インド密教研究の写本読解の喜び📕
学生時代からのテーマであるインド密教、特にその実践の研究を継続して行っています。『所作集註』が、『金剛頂経』をベースにしていることから、『金剛頂経』自体の理解にも努めています。また、後期インド密教における教理・実践の研究を、サンスクリット語写本をもとに行っています。
写本を読むのは、しんどいことも多いです。写真の状態が悪かったり、写本自体が汚損していたりすると、時間をかけた割には、あまり読解が進んでいないことが多いです。しかし、一次資料に直接触れ、これまで分からなかったことが明らかになる瞬間は、何よりも価値があると感じています。

種村先生の経歴やご専門についてもっと詳しく知りたい方は、以下のリンクをご覧ください。
https://researchmap.jp/ryugen_tanemura

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