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宗教学専攻

【宗教学専攻】日本宗教学会第76回学術大会に参加しました②

 前回に引き続き、日本宗教学会第76回学術大会の様子を報告します。

 大会3日目(9月17日)の午後は個人発表に加え、パネルディスカッションも多数行われました。以下では、本学の先生方およびOB・OGが登壇されたものを紹介します。

▼第6部会「総力戦下の宗教系大学・専門学校における「理念」の変質」
 本パネルでは、研究室OBの江島尚俊先生(田園調布大学)が司会を、本学の柴田泰山先生がコメンテータを務められ、同じく本学の三浦周先生が登壇されました。宗教系大学・専門学校が、昭和前期の総力戦体制下における国家との関わりの中で、従来保持していた建学の精神や教育方針等の「理念」を「読み替え」ていった過程や背景について検討しました。
 コメンテータを務められた柴田先生からは、「何が」「なぜ」「どのように」という視点に基づいて、それぞれの学校が「読み替え」ていった内容を問う問題提起が行われ、各学校の外部との繋がりや開校以来持つ性格等についてさらに踏み込んだ議論が行われました。
 フロアからの質疑では、国家からの宗教に対する期待への対応があったのではないか、「読み替え」には「誰が」「誰のために」という視点も追加すべき、といった意見が寄せられました。議論を通じて浮き彫りにされた各学校における「読み替え」には、強制的なものと自発的なものが共存しており、そのような認識を持てたこともあって筆者(小泉)は大きな刺激を受けました。
 締めくくりに代表者の江島先生は、<本パネルテーマは近代国家と宗教という大きなテーマへの接続を孕むものであり、その研究がまだ緒についたばかりという状況で、個別研究に留まらず3つの事例が並行して報告された意味は大きい>と述べられており、今後のこの分野の研究の広がりを予感させるパネルディスカッションでした。

▼第7部会「多死社会における仏教者の社会的責任」
 第7部会では、本学の小川有閑先生が代表を務められたパネルが行われました。本パネルは、科学研究費(挑戦的萌芽)による共同研究として進められているもので、研究代表である本学の林田康順先生がコメンテータを務められました。また、本学の小川先生、髙瀨顕功先生、研究室OGの問芝志保さんも登壇されました。
 小川先生は、「超高齢・多死社会に僧侶が求められるもの」というタイトルで発表され、多死社会の到来や宗教界の新たな動向としての臨床宗教師・臨床仏教師の登場を背景に、寺院や僧侶といった宗教資源の社会的役割・潜在的効果を可視化させることの意義を論じました。また、認知症を中心とした高齢者ケアの現場に焦点をあてるという本発表の全体的な趣旨と方法を説明され、対象者の属性など質問紙調査で得た統計の結果を発表されました。

  ↑小川先生とパネル登壇者の先生方

 髙瀨先生は、「高齢者福祉施設、医療施設における宗教的ケアの現状とニーズ」というタイトルのもと、宗教的ケアよりもスピリチュアルケアがより求められるという指摘を前提とした、ターミナルケア場面における宗教的ケアのニーズ把握について、質問紙調査による結果と考察を発表しました。傾聴などのスピリチュアルケア的ニーズがある一方で、信仰への親和性のある人は僧侶や寺院の持つ「場」の提供にニーズを感じており、また現場スタッフに対するニーズとしての宗教的ケアの可能性も示唆されました。

  ↑発表を行う髙瀨先生

 各発表の後、コメンテータの林田先生や30名ほどいたフロアから多くの質問が寄せられ、活発な議論が交わされました。
 また、同じパネル内では、計量的データから、他に信仰のある人ほど亡くなっていく入所者へのケアに前向きに取り組む傾向があるという発表もありました。宗教観とケア観との関わりや現場スタッフへのケアニーズとしての宗教的ケアの可能性など、宗教者の医療・介護現場でのニーズを考える上で興味深いパネルでした。臨床宗教師など宗教者の資格が制度化されていく中で、宗教者のニーズ調査はより重要になってくると思われます。今後の研究にも目を配りたいと思っています。


次回は、パネルディスカッションの報告(後編)を投稿予定です。

                                 (文責:小泉壽・渡邉龍彦)