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宗教学専攻

奈良県桜井市・宇陀市研究室研修旅行に行きました

 6月21日~22日に天理大学で開催された「宗教と社会」学会第22回学術大会終了後、23日に大正大学宗教学研究室では、寺社への参拝を兼ねた研修旅行として奈良県桜井市・宇陀市を訪れました。参加者は、弓山先達也生、寺田喜朗先生、星野壮先生、院生ら8名です。

 最初に、本学の設立宗派の一つである真言宗豊山派の総本山・長谷寺を訪れました。長谷寺は686年、道明上人が初瀬山の中腹である西の岡に銅板法華説相図を安置したことが起源とされ、西国三十三観音霊場の第8番札所として有数の観音霊場とされています。現在の本尊・十一面観世音菩薩は、室町時代に建立された木造の立像で、像高は約10メートルもあり、その堂々たる姿は、全国に広がる長谷信仰の根本像として威厳を放っています。

 今回私たちは、この観音さまが安置される国宝の本堂に特別に入れていただき、御足に直接触れる「御足参り」をすることができました。多くの人びとが長きにわたり信仰の拠り所としてきた観音さまに直に触れることで、深淵な仏徳を得られた気がしました。この他には、平安時代の春日大社の社司が病気平穏の御礼のために造った登廊や戦後初めて建立された五重塔、大講堂や書院がある本坊などを拝観しました。その後、寺田先生は自身の調査研究のため調査地へ向かいました。

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長谷寺の正門「仁王門」にて

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  本尊が安置されている本堂(長谷寺)

 そして、弓山先生と院生らは奈良県宇陀市へ向かい、室生寺に参拝しました。真言宗室生寺派大本山の室生寺は奈良時代、後の桓武天皇である山部親王の病気平癒のため、5人の僧が室生の山地で祈祷をしたことが起源といわれています。この祈祷によるあらたかなご利益から、勅令で室生寺が建立されたとのことです。また、室生寺の最大の特徴といえるのが、真言密教の根本道場である高野山が厳しく女人禁制をひいたのに対し、室生寺は女人にも開かれた「女人高野」として親しまれている点です。

 今回は残念ながら、多くの仏像が、宮城県仙台市で開催される東日本大震災復興祈念特別展出展のため不在でしたが、本堂正面の厨子に据えられている如意観音菩薩は、なんともいえない安穏な表情で私たちを迎え入れてくれました。

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江戸時代からある礼堂(室生寺境内)

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室生寺の正門

 

 室生寺を参拝後は、同市の龍穴神社を訪れました。龍穴神社のある室生地域は、早くから水神信仰と中国思想の龍信仰が結びつき、龍穴信仰として発展した霊地です。そうしたことから、室生地域には、雨や雲を支配する龍王が住むといわれる龍穴があり、そこに住む水の神・龍神を祀っている龍穴神社があります。室生の龍穴信仰は、室生寺の創立とほぼ同じ平安前期といわれています。神社の参道は短いながらも拝殿前の垂直にそそり立つ杉の巨木などの景観は、古来自然と共生してきた神道の様相が見て取れました。

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龍穴神社から約500m先にある「龍穴」

 

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拝殿前にある杉の巨木

 今回私は長谷寺、室生寺、龍穴神社に初めて参拝しましたが、これら歴史ある寺社への参拝は、何百年前も過去に生きていた人びとが、どのような心情で宗教を信仰し寺院や神社を建立したかについて考える契機となりました。多くの事柄が変化し続けている現代社会において、古くから変わらず伝統を守り維持し続けることは難しいことであると思います。しかしながら、立派な仏像や建築物などの伝統文化は、古くから人びとの信仰によって守られ、地域やその土地に深く根付いていることに今回の研修旅行を通して気づかされました。

(文責:福井敬)

 (この記事は、大正大学宗教学会のホームページの内容を掲載しております)

大正大学宗教学会HP http://www.taisho-shukyogakkai.net/

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