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宗教学専攻

【震災と宗教】いわき市、震災から4年②

 大正大学宗教学会「震災と宗教」研究会では、3月10日から11日にかけて、福島県いわき市へ調査に行ってきました。本調査では、4年目を迎える被災地においての、追悼行事や宗教団体の活動などに参加させていただきました。また、本調査では、2014年に東日本大震災慰霊碑を建立された、日本タオイズム協会へ初めて訪問しました。そのため、本記事は、日本タオイズム協会を中心にまとめさせていただきました。なお、本調査では、多数の行事に参加するために、班を分けて、車で移動しました。

 本調査は、下記の通りに行われました。

 3月10日

・日本タオイズム協会への震災モニュメント調査。

・真言宗智山派の浄光院で久野氏を訪問。

・浄土宗菩提院の霜村氏と会食し、その後霜村氏の案内で廿三夜尊堂の見学。

 3月11日

・真言宗智山派青年会による海岸塔婆回向に参加。

・孝道山福島別院における東日本大震災追悼法要に参加。

・真言宗智山派の修徳院での東日本大震災物故精霊追善法要に参加。

・神職有志の会主催の「慰霊および復興祈願祭」に参加。

・浄土宗浜通り組青年会で行っている浜○かふぇを訪問。

・平中央公園での「3.11いのりのつどい」を見学。

・ライブハウスSONICいわきで「ASYLUM2015 in FUKUSHIMA」を見学。

 

 本調査では、震災から4年経ったいわき市において、宗教者がどのような活動を行っているのかを、慰霊祭や法要に参加することで理解しようとしました。私は、真言宗智山派青年会智山派青年会による海岸塔婆回向に参加しました。海岸塔婆回向は、いわき市内の海岸沿い9カ所に安置された、震災物故者のための塔婆を行脚する行事です。当日はあいにくの冷たい風が吹き付ける中、2つの班に分かれて行われました。1班は久之浜、四倉、江名、永崎、豊間に、2班は小之浜、小浜、岩間、須賀を車で回り、回向をしました。塔婆に向かって読経し、回向をする青年会の方々からは、粛々とした雰囲気とともに、死者に向き合う真剣さが伝わってきました。

 

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3月11日智山派青年会の海岸塔婆回向(久之浜)

 

 また、本調査では、日本タオイズム協会に建立された、東日本大震災慰霊碑を見学させていただきました。日本タオイズム協会(2013年設立)は、早島天来(1911-1999)氏によって設立された日本道観(1980年設立)を母体とする、一般財団法人です。同協会は、日本におけるタオイズム(人間も自然の一部と考え、天地自然に逆らわない生き方(タオ(TAO))をすることで、体に流れるエネルギー(気)を良くし、健康的で良い人生を送るという考え方)を研究し、世界中のタオイストと交流することを目的としています。

 日本道観は、福島県いわき市泉町に総本部を持ち、日蓮宗早島寺が隣接しています。早島寺の住職である早島妙瑞氏は、日本道観現道長で、日本タオイズム協会の会長でもあります。早島寺は、元々早島天来氏が組織していた結社が、日蓮宗の寺院となったものです。そして、この早島寺の境内にあるのが、東日本大震災慰霊碑です。

 慰霊碑は、2014年08月30日、日本タオイズム協会によって建立されました。3.11当時、いわき市で被災した同協会は、同じ道教として交流のあった台湾の台湾首廟天壇と大観音亭興斎宮から、また、台湾の3つ小学校から義捐金が送られました。こうした支援に対する感謝と、震災の記憶を風化させないために、モニュメントが作られたそうです。地球を模しているモニュメントは、正面から見るとちょうど日本と台湾が見えるようになっていて、義援金に対する感謝が伝わります。また、台座には陰陽の印と2匹の龍が描かれており、中国と日本の文化のつながりを大事にする、日本道観の拘りが私には感じられました。

 

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日本タオイズム協会の震災モニュメント

 

 東日本大震災から4年たった3月11日を、被災地で迎えることになりましたが、震災からの復興は道半ばであることを、改めて感じさせるものでした。一方で、いわき市では、平中央公園で行われた「3.11いのりのつどい」や、神職有志の会主催の「慰霊および復興祈願祭」など、復興に向けた地域の人々や宗教者の取り組みがあります。私には、少しずつではありますが、震災から乗り越えようとする、被災地の人々の足音が聞こえたように思いました。震災から4年目を迎えましたが、多くの宗教者が、被災地のために変わらずに活動を続けています。こうした活動が今後も続けられることは、被災地の人々が震災と向き合っていくための、大きな力になるのではないかと思いました。そして、震災から4年目を迎えた今、日本タオイズム協会のように、新たな震災モニュメントが今後も増えるのではないかと思いました。

 こういった震災後に建てられた震災モニュメントの推移と、継続的に続けられてきた宗教者による活動を観察することは、被災地の人々における、震災と宗教に対する向き合い方を理解する上で、とても重要であると改めて感じました。最後になりましたが、調査にご協力頂いた宗教者及び関係者の皆様、お忙しいところ、本当にありがとうございました。

 

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3月11日14時46分の黙祷(修徳院)

 

(文責 長島三四郎)

(大正大学宗教学会「震災と宗教」研究会の調査は、大正大学学内研究助成金ならびに科学研究費補助金による成果の一部である)

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