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宗教学専攻

台湾調査② ~龍山寺・行天宮~

 3月の台湾調査では、教団以外にも、台北を中心としたさまざまな宗教施設等を見学することができました。今回はそのなかから、観光地としても人気を集める寺廟である龍山寺と、関帝を祀る行天宮について記します。

 そもそも、台湾人の宗教観はどのようなものであるでしょうか。大きな特色としては、習合的であることが挙げられます。2003年の米国国務省が発表したデータによると、台湾では全人口の80%近くがなんらかの信仰形態を持っているとされています。しかし彼らは仏教のみならず、儒教や道教、民間信仰、あるいは新宗教等を重複して信仰しているため、その区分は困難です。更に、心が病んだときはこの廟、体が病んだときはこの寺院、などと、さながら病院のように悩みによって信仰対象を使い分け、日常的に宗教施設への参拝を行っています。今回の見学でも、境内でお祓いの儀式が行われており、「治す人」の前には長い行列ができていました。そのなかには、若い人たちの姿が多くみられたことも印象的でした。

 

 龍山寺も、この習合的宗教観の影響を強く受けています。龍山寺は、1738年、福建省から渡来した人々によって創建された台北市内最古の寺院です。「四大外国人観光地」とされており、近くでは台北最古の夜市である華西街夜市が開かれていることもあり、筆者が訪れた際も多くの人々で賑わっていました。

 龍山寺の本尊は台湾で最も高い人気を誇る観世音菩薩ですが、境内では道教や儒教などさまざまな宗教の神格等も数多く祀られています。ここでも、台湾の廟で一般的に見られるような参拝形式が取り入れられており、参拝者は長い線香を購入後、境内に配置された7つの香炉の前で順に参拝します。この台湾での参拝方法は拝拝(パイパイ)と呼ばれており、頭上に線香を重ね、振るようにして礼をするのが特徴的です。願いごとをするまえには、心のなかで名前、生年月日、住所を神に告げます。そうして、香炉ごとに自己紹介と願掛けをし、手持ちの線香を1本ずつ香炉にさして行くのです。参拝客たちは真剣な面持ちで祈りを捧げていました。

 さらに我々は、一連の拝拝をしたのち、台湾式のおみくじ「聖籤(シンシャム)」を引きました。台湾寺院や廟では、人々が半月型の木片「筊杯(ブァッベイ)」を投げる光景を頻繁にみかけることができますが、これは、事前にひいた竹棒に記された番号が自分に適したものか、神に伺うための行為とされています。聖籤はこの番号ごとに引き出しに納められているのですが、参拝者は投げた木片が陰陽を表す裏表の形で落ちるまで、竹棒を選び続けなければなりません。この方式は、日本式の手軽に引けるおみくじより手数がかかるため、「その札こそが自分のための札である」という感覚が強く感ぜられるように思いました。

聖籤が入っている引き出し.jpg

聖籤の入っている引き出し

 行天宮は1943年に創建した行天堂を起源とする関帝廟です。道教が基になっているものの、龍山寺と同様に仏教や儒教との習合がみられます。香炉は3カ所あり、中央には関聖帝君を含む「五恩主」が祀られています。さて、ここで目立っていたのが前述の「お祓い」です。これは「収驚(ショウジン)」とよばれ、「ショック等により抜けてしまった魂を体に戻す」儀式なのだそうです。行天宮では、青い衣のボランティアが参拝者に線香の煙をかけながら体を叩く様子をみることができました。

収驚のようす.jpg

収驚の様子 

また、その後ろには経典を読むための経机が用意してあり、青い衣の信者たちが熱心に経典を繰っていましたが、こちらは収驚の列と比べ、高齢者が多く見られました。写真の女性が読んでいるのは道教の経典「救苦救難神咒」と思われます。

 

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経典を読む女性

以上、今回は台湾の代表的な寺院・廟である龍山寺と行天宮についてお伝えいたしました。台湾の人々は、日本人に比べて宗教に対する垣根が低く、積極的に関わることに抵抗が少ないと感じました。日本の寺院とはまた異なる寺院のかたち、参拝のかたちをみることができ、とても刺激的な1日となりました。次回は、台湾における日系新宗教(生長の家、創価学会、真如苑)について報告したいと思います。

(文責・金岡瑠璃子)