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宗教学専攻

【宗教学専攻】大正大学宗教学会2018年度秋期大会が開催されました

 2019年3月8日(金)、本学にて大正大学宗教学会2018年度秋期大会が開催されました。
他大学の先生方や院生などの多くの方々も参加していただいた今大会では、以下の発表が行われました。

第一報告
「教科書の中の宗教知識-明治後期を中心に-」松平寛正(大正大学大学院修士課程)

第二報告
「戦前期における布哇浄土宗教団の展開過程-現地法制度に基づく再解釈-」魚尾和瑛(大正大学大学院博士課程)

第三報告

「国民道徳論と先祖祭祀-国民的習俗の実践教育-」問芝志保(大正大学非常勤講師・筑波大学大学院博士課程)




 松平さんは、ご自身の修士論文をもとに、明治期の小中学校教科書の中で現在の「宗教知識教育」に該当するものが、どのように扱われていたのかについて発表しました。海外の諸宗教が登場する「外国地理」を対象とし、1903(明治36)年の最初の国定地理教科書に登場する「宗教」に関する記述内容を紹介しました。また、国定教科書編纂に大きな影響を持ったとされる地理学者の野口保興(1860-1943)等の著作を分析し、当時の地理学者が「宗教」に関する内容の教授について、どのように考えていたのかを明らかにしました。
 フロアからは、発表内容の興味深さから多くの質問が寄せられ、また本学の村上先生から、本論は今後の研究発展の可能性を多く持つものであることが示されました。




 続いて魚尾さんは、ご自身の博士論文で示した知見のうち、戦前ハワイ浄土宗教団が現地法制度に対してどのような対応を取ったのか、教団の変化と、変化の意味について発表しました。戦前ハワイの日系仏教教団に関する先行研究では、法制度については、本派本願寺を対象として、現地法人設立に関する成果が出されているのみでした。また、1929年にハワイ準州で制定された、宗教教育法については、研究蓄積がほとんど無く、このような研究史を踏まえて、ハワイ浄土宗を事例に検討されていました。
 発表では、ハワイ浄土宗の概要を踏まえ、現地日系人向けの新聞や教団内部資料、行政資料を活用した分析と考察が行われました。結果、浄土宗の法人化は、本派本願寺と異なり教勢の維持という観点から成されたことを明らかにしました。また、宗教教育法制定の前後で、各宗派の日曜学校の教育内容に変化が起きたことを明らかにし、浄土宗においても日曜学校の増加などが見られたことを明らかにしました。これらの知見は、ハワイの日系仏教の開教に一律ではない、様々な要因があったことを証したものでした。
 フロアからは、内容の質疑応答のみならず卒業生自らの現地調査の思い出なども語られ、魚尾さんが目指すハワイ仏教史の拡充に大きな期待が寄せられました。




 続いて問芝先生から、ご自身の博士論文の中で「肝となる部分」と言われる当該章の内容発表が行われました。先行研究では、戦前の先祖祭祀は、皇室の神話的先祖を全国民の先祖とする家族国家論でのイデオロギー的祖先観と、それを日本固有なものとした国民道徳論の教導から成ると捉えられてきましたが、それとは「異なった見方を示したい」との先生の意欲的なアプローチです。
 分析と考察では、まず、穂積八束・穂積陳重・井上哲次郎ら国民道徳論者たちが、その著作において家族国家論と先祖祭祀論をどのように論じたかを確認し、それを踏まえ、教育現場ではどのような方法・内容で指導が行われたのか、また、どのような困難が感じられていたのかを実際の指導書などから明らかにしました。これらの分析を通し、国民道徳教育における先祖祭祀が3つの構成要素から成っていることを論じました。
 この刺激的な発表に対し、フロアからは内容への質疑応答のみならず妥当性や柳田國男の先祖観解釈も含めての活発な論議が行われました。筆者(小泉)も知的興奮が大きく、先生に論文刊行についてお伺いしたところ、年内に春風社より出版されるとのことで、楽しみにしています。




 その後は懇親会が行われ、先生方やOB、他大学の院生や本学院生が出席しました。発表に関する議論の続きなどの様々な話題が出され、盛会のうちに大会は終了いたしました。
 大正大学宗教学会では年に2回、このような研究発表を行う機会を設けています。どのような研究が行われているかを学べる場なので、興味・関心のある方は是非ご参加ください。

                                      (文責:小泉壽)

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