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宗教学専攻

【宗教学専攻】寺田喜朗先生共著『国家神道と国体論—宗教とナショナリズムの学際的研究―』の紹介


 刊行から時間が経ってしまいましたが、今回は、本学教授の寺田喜朗先生が共著者として執筆された論文集、『国家神道と国体論—宗教とナショナリズムの学際的研究―』(弘文堂、2019年9月刊)を紹介します。




 本書は、近代日本の宗教とナショナリズムをめぐる「知」の実態を、「国家神道」研究と「国体論」研究の接合という視点から解明を試みたものです。従来の研究においてそれぞれ別個に展開してきたこの2つの研究領域を有機的に接続させ、新たな議論の方向性を打ち出すことを目的としています。

 神道史、宗教学、宗教社会学、日本思想史、日本教育史、政治学、民俗学をはじめ多様な研究分野から論考が寄せられており、具体的な史料に基づいた実証的な検討が展開されています。

 寺田先生は、第二部の「戦前期における谷口雅春の国体言説――国体明徴運動の影響をめぐって」を執筆されています。昭和10年(1935)に展開された国体明徴運動が新宗教の国体にまつわる言説にどのような影響を与えたのか、生長の家の創始者・谷口雅春の事例から考察しています。


目次は以下のとおりです。

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国家神道と国体論に関する学際的研究序説 (藤田大誠)

第一部 国家・神社・神道
「国家ノ宗祀」の制度と精神 (河村忠伸)
近代における造化三神論の展開 (斎藤智朗)
日露戦後の神社中心主義政策と戦前日本の神社観――「神社―ネオ国教」試論 (畔上直樹)
19世紀建築論と明治天皇奉斎――表象・趣味・ナショナリズム (青井哲人)
実業家と伊勢神宮参拝に関する一試論 (平山 昇)
戦前期における官社宮司のキャリア形成――藤巻正之の事績を手掛かりとして (藤本頼生)
国立ハンセン病療養所の神社創建――国家権力下のムラ氏神 (柏木亨介)

第二部 国民・教育・宗教
近代日本の初等教育における政教分離原則とその緩和 (井上兼一)
昭和戦前期の仏教界と海外日系二世――見学団、日本留学、修学団に注目して (高橋典史)
戦前期における谷口雅春の国体言説――国体明徴運動の影響をめぐって(寺田喜朗)
昭和10年の消防招魂祭 (小島伸之)
「西の靖國」の創建――地域神社の戦時期 (福島幸宏)
靖國神社と「福祉国家」――方法的序論 (菅 浩二)
国立墓地群を通して見る韓国ネイション内部の「亀裂」について (田中 悟)

第三部 国体・思想・学問
筧克彦の思想と活動――国体論との関わりに注目して (西田彰一)
河野省三の学問と思想――神社を背景とした国体論 (高野裕基)
近代神道と「八紘一宇」――二荒芳徳の「八紘為宇」論を中心に (昆野伸幸)
井上孚麿の新体制批判と天皇親政論 (宮本誉士)
里見岸雄と「国体明徴」――「天皇機関説の検討」から《日本国体学会》の設立へ (金子宗德)
国体明徴運動と憲法学者 (小川原正道)
「国家神道」と「国体」のあいだにて (山口輝臣)
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                                     (文責:大場あや)

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